メディーナの連続再選-ドミニカ共和国大統領選
私事で申し訳ないが、キューバに3度、計6年間駐在したのに、スペインによる十五世紀末からのアメリカ植民地統治の基点だったドミニカ共和国には、歴史的な関心を強く持ちながらも、行ったことが無い。現役時代、市場として管轄する立場にありながら、一時期には勤務先の駐在員もいながら、残念なことだと思う。この国の動きは主としてAP、Reuters、AFP及びEFEの報道が便りだが、印象としては、それらの外電のこの国への関心は低そうだ。眼が、どうしてもキューバ、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、そしてメキシコに行ってしまうのだろう。私の方も、この国をブログで取り上げるのは前回大統領選の時http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2012/05/post-a8ab.html
以来、つまり4年ぶり、となる。
去る5月15日、この国で総選挙が行われた。この国では、1996年以降、大統領選と自治体選の2年後に議会選が行われてきた。1966年以降二度に亘り連続再選を繰り返したバラゲール(1906-2002。大統領在任1966-78、1986-96)が、1994年選挙時、自らの任期を2年間、議会の任期4年は不変、としたことが元になっている。それをラ米で一般的な、且つ94年以前はドミニカ共和国でも採用されていた総選挙(大統領、議会同時選挙)方式に、22年ぶりに戻した。前回議会選で当選した議員の任期を4年から6年に延長することで実現した。
中央選挙委員会(JCE)開票作業が手作業のためか、5日経った段階での開票率が92.9%台だが、大統領選は「ドミニカ解放党(PLD)」の、また副大統領候補に前回同様、副大統領候補をフェルナンデスレイナ前大統領(1853~。在任1996-2000、2004-12)夫人のマルガリータ・セディーニョ現副大統領(51歳)に立てたメディーナ(64歳)現大統領の得票率が約62%であり、連続再選は確定している。この得票率は、ドミニカ内戦後の1966年選挙以来、特殊例(1970、74年にPRDが選挙をボイコット)を除くと、最高だ。2012年に就任して早速断行した財政改革、その後の高い経済成長や優先政策としての教育振興で高い支持率を維持しているのが、何よりの勝因だろう。
バラゲールの最後の政権下で決まった大統領連続再選禁止は、メヒーア(1941~。大統領在任2000-04)政権時代に解除、フェルナンデスレイナ第二次政権で復活した。そしてメディーナ(64歳)現政権下でまたしても解除されている。
大統領選で二位につけたのは「現代革命党(PRM)」から立候補した48歳のアビナール候補で同時点の得票率は35%だ。副大統領候補にはメヒーア(1941~。大統領在任2000-04)元大統領の息女、カロリーナ・メヒーア(47歳)氏を立てた。
この国では、上記バラゲール時代が終わると、PLDと、「ドミニカ革命党(PRD)」の二大政党時代に入った。いずれもボッシュ(1909-2001)が創設した。後者が最初で、1939年、トルヒーヨ(1891‐1961)独裁を離れて亡命していたキューバで立ち上げた。1973年に自ら離党し、前者を作った。要するにこの二大政党は同根だ。今回のアビナール候補は、2012年大統領選で、PRDの副大統領候補だった人で、その後、大統領候補だったメヒーア氏と共に、PRMに移った。一方で、PRDの今回候補者は同党のバルガスマルドナード党首だったが、途中で立候補を見合わせ、メディーナ氏への支持を表明していた。理由は、彼の国民統合政府への共鳴、の由だが、同根同士、あまり違和感は無いのだろう。一方でアビナール氏は、バラゲールの「社会キリスト教改革党(PRSC)」の協力を得ている。
31地方(provincia)及び首都特別区を単位とする議会選は、定数32議席の上院が夫々から一人ずつを選ぶ小選挙区制を採っており、選挙直前、PLDが31議席、独占状態だった。同190議席の下院も、PLDが102で過半数を確保している。在外議員7名を除く183名が比例代表制で選ばれ、内5名は少数政党に配分される。拘束名簿方式なので、正しく政党同士の選挙だ。第二党はPRDで45、第三党がPRMで35となっており、この3党で182議席を占める。これがどう変わるか、開票が大統領選よりも遅れるのは、他ラ米諸国同様であり、辛抱強く待たねばならない。だが、メディーナ第二期で少数与党になることは考えられないし、且つ、PRDが協力的だ。ラ米資源国と異なり、資源の国際価格の動向に振り回されることも無い。正常安定は続きそうだ。
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