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2015年3月17日 (火)

選挙の年に-ベネズエラ(2)

昨年1218日、米国で「14年ベネズエラ人権・市民社会保護法」が成立した。「同年2月から5月にかけて行われた反政権抗議デモへの強権弾圧に関与したベネズエラ人」に対する制裁を定めたもので、該当者及びその家族が米国に持つ資産を凍結し、入国を禁止するものだ。二十数名の個人名が候補者として挙がった。入国禁止令は、対象者不明のまま、本年22日に出された。そして39日、資産凍結令が、7名のベネズエラ人に対して出された。入国禁止令も発動される。「ベネズエラ情報局(SEBIN。米国のCIAに相当)」、「国家警備隊(GNB)」と「国家警察(PNB)」及び国軍の前、現幹部計6名は、制裁法の対象候補者に含まれている。あと1名は、http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2015/02/post-4360.htmlで触れたレデスマ・首都圏市長事案担当の検察官だ。具体名が出たところで、制裁法は発効したことになる。

その翌日、マドゥーロ大統領は議会に特別権限を申請した。通常「授権法(Ley Habilitante)」で括られる、特定分野で大統領が政令で国政を動かすことを認める法律で、315日の日曜日に「反帝国主義法」として議会承認された。有効期限は今年一杯、となっており、国土防衛と軍事力強化に加え、米国の経済、金融、通商面の封鎖に備える、などと記されているようだ。 

上記の7名に対する資産凍結発令の際、オバマ政権はその理由を「米国の安全保障上、ベネズエラが非常且つ特別の脅威となっている」と言明したことで、対米配慮姿勢が顕著な米州機構(OAS)の、来る5月に退任するインスルサ事務総長もきつすぎる(bastante dura)との懸念を表明した。14日にはキトで南米諸国連合(Unasur)のベネズエラ問題に関わる緊急外相会議が行われ、ベネズエラが米国の脅威な筈がない、米国に主権の尊重と内政不干渉の国際法に則り、制裁法の解除を求める、との共同声明を出した。その前に、対米国交回復交渉の第三回会合を間近に控えたキューバが、マドゥーロ政権支援の公言に踏み込んだ。彼は313日にニカラグアを訪問したが、ここで彼への連帯のデモを含めた歓迎を受けた。

マドゥーロ政権は、上記Unasur外相会議と同じ14日に、正規軍兵士8万人、国防相によれば民兵ではない市民2万人の合同軍事演習を開始した。全国規模で10日間行われる。そもそも、2014年のベネズエラの反政権抗議活動弾圧のベネズエラ人当局者の一部を、米国が制裁することには無理があろう。だから、米国の安全にとり脅威と言い訳を付けねばならなくなる。マドゥーロ政権はこれをベネズエラへの脅威と逆に捉え、それに備えるため、軍事演習を行う、とした。 

今回の授権法は、マドゥーロ氏には201311月に次ぐ二度目のものだ。一度目は、経済活性化と汚職追放に関わる特別権限が期限1年間で付与され、50近くの政令を発布した実績がある。結果として物資欠乏やラ米で、或いは世界でも飛びぬけて高いインフレとマイナス成長を招いている。彼はこれを、米国を背後にした極右勢力が仕掛けた経済戦争による、と理屈付けした。

米国が制裁法対象のベネズエラ人入国禁止令を出して9日後、レデスマ首都圏市長が、拘留された状態のロペス元チャカオ市長、及び議員資格を剥奪されたマチャード前議員との連名で「移行のための国民合意」を公表した。マドゥーロ政権は末期にあり、真の民主主義を取り戻すための計画、とした。

マドゥーロ氏はこの頃より、軍の一部が彼らと組んで自分や政府機関への攻撃を計画し、国情不安定化及びクーデターへの動きを強めている、とまで言うようになったが、219日のレデスマ拘束を機会に、米国の関与に力点を置くようになり、米国政府から根拠の無い虚構、と言われようが、意に介しない。2月末にはブッシュ前大統領、対ベネズエラ制裁法推進者のルビオ上院議員らに対する入国禁止、現在100人いる米国大使館駐在人員を17名にまでの大幅削減まで言い出していた。 

こんな状況下、今年中に行われるべき議会選挙の行方が気掛かりだ。マドゥーロ氏への授権法は、選挙時期に重なる。彼は自らの失政による物資欠如、高インフレ、及び社会不安の矛先を「米国を背後にした極右」による「経済戦争」に向けようと躍起になっている。反政権派で大半が穏健派とされる「民主統一会議(MUD)」も、これをかわし、平和的抗議活動に集中して、ひたすら議会選挙を通じた政権交代を目指す戦略で臨んで来た。選挙が実施されるか否か、の基本的なところでも、大いに戸惑っているのではなかろうか。選挙評議会は既に、米国政府の措置は議会選挙プロセスの障害、と言い出している。

(続く)

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