第三回CELACサミットに思う
米国とキューバの外交関係復活交渉が開始されて間もない1月28、29日の両日、コスタリカのべレンで、ラテンアメリカ・カリブ共同体(Comunidad de Estados Latinoamericanos y Caribeños、以下CELAC)の第三回目のサミットが開催され、夫々国内問題を抱える数名を除く域内諸国首脳の殆どが出席した。CELACとは、言ってみれば、1964年以来キューバ抜きだった米州機構(OAS)と対照的に、キューバを含み米国、カナダを外した米州共同体だ。今回テーマは「貧困との闘い」だが、最大の関心事は米国の、歴史的と言われる対キューバ政策の変更で、ラウル・カストロ議長も83歳と言う高齢をおして出席した。少なくともラ米十九カ国の首脳なら、全員が出席を望んだ筈だ。
ペーニャニエト(メキシコ)、フェルナンデス(アルゼンチン)、ウマラ(ペルー)、カルテス(パラグアイ)各大統領は欠席した。ペーニャニエト氏は昨年11月の高速鉄道建設の入札にまつわる疑惑、フェルナンデス氏は1月18日に起きた、彼女を告訴していた検察官の変死事件で国を空けられない事情が有る。前者は3週間前、オバマ大統領を訪問し、米・キューバ間正常化への最大の貢献を申し出たばかりだ。後者はハバナでの前回サミット時、健康問題と国内での難題の最中に駆け付け、且つフィデル前議長と昼食を共にしている。今回欠席は不本意の極みだった、と思う。ウマラ氏は青年労働法改正案を審議するため、自身が召集した特別議会の開催中に不在となることへの是非が問われ、自己の判断で直前に出席を断念した。カルテス氏は執務停滞状況を欠席の理由とする。
CELACは故チャベス前ベネズエラ大統領の肝いりで2011年12月に誕生した(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2011/12/post-e24a.html)。米国とカナダの北米先進国を交えず、ラ米・カリブ諸国が内外の諸問題に結束して当る共同体、の位置付けだが、OASのような確たる事務局を持った組織ではない。多くの首脳は、域内紛争の解決、域内国家間関係の強化、経済開発推進を追及する、一種のフォーラムと見る。ただ、領土問題を抱える、経済政策が分かれる、人権問題で非難し合う、立場や政見の異なる多様な国々の首脳同士がサミットで同席する。33カ国が結束を深める場となっているのは事実だろう。
ラ米・カリブ諸国は、大半が米国を最大の貿易相手国、投資国と捉える。米国の影響力は、絶大だ。OASの本部もワシントンにある。一方、近年にはこの地域への中国の接近が顕著だ。米国も神経を尖らせていよう。加えて欧州連合(EU)諸国の対ラ米関係深化もある。2013年1月の第一回サミット(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2013/01/celac-eu-35ac.html)の機会に、開催されたチリのサンティアゴに、EU諸国から11名もの首脳が駆け付けた。
今回サミットでは、メディアはやはり1時間にも及ぶラウル・カストロ議長の演説に注目したようだ。我が国にも伝えられるとおり、米国との国交は再開するが、関係正常化にはグァンタナモの米軍基地一体の返還が必要だ、と述べた。保護国だったキューバとの条約で1903年から120平方キロ、と広大な同地を租借した。租借料は年間2千ドルで、実質的なバティスタ政権時代からは4,085ドルとなり、現在も同額のままだ。革命後のキューバ政府は、租借継続を拒否する、としており、同地の返還を訴えてきた。租借料も受け取っていない。これを言ったものだ。正常化となれば、確かに返還するのが当然だろうが、オバマ大統領であっても、返還は毛頭、考えていない。
CELACサミットは29日、共同宣言を採択して終了した。キューバについては対米国交再開を喜ぶとして、米国に対しキューバ経済制裁の解除やテロ支援国家リストからの削除(いずれもラウル議長が演説で強調)を訴えるに留めた。
共同宣言には、その他にも貧困撲滅策の構築、環境保全への行動など、93項目が盛られた由で、主催国コスタリカ外相自身、余りの多さに辟易している、とか、中身により賛同できない国も現れ、結局全会一致での採択に至らなかった旨が、メディア情報にある。この中には、恒例となっているアルゼンチンのマルビナス(フォークランド)領有権主張への連帯も有り、勿体無い気がする。次期持ち回り議長国のエクアドルが、宣言論点の集約に努める方針、と伝えられる。加えて、今回サミットに国連やOASの事務総長が前回同様に出席したとの報道は無い。何となく、軽くなった感じを受ける。