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2014年11月 4日 (火)

ブラジルのルセフ再選とウルグアイ総選挙

私事で恐縮だが、去る1021日から29日まで、短いなりに9年ぶりのニューヨーク滞在を楽しんだ。海外旅行中、パソコンは携行せずネット情報には接しない。滞在していたホテルのテレビではCNNの国際版チャンネルもBBCも、スペイン語チャンネルも無かったし、現地新聞も買う気がせず、ブラジル大統領決選投票でのルセフ勝利は、ホテルに置いてあったUSA Todayの経済欄の一部で知った程度だ。ウルグアイ総選挙については、大統領が決まったわけでもなく、帰国後ネットで知った。

米国のABCNBCCBSの三大テレビ局及びFOXが伝えるのは、中間選挙が中心だった。オバマ政権は下院で野党に過半数を握られ、ただでさえ政策実現に高い障壁を抱えていたところに、中間選挙で下院のみならず上院までも与党過半数割れを来たし、大統領が任期を2年残しレームダック化するかどうかの瀬戸際なのだから、当然と言えよう。 

http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2014/10/post-7b1e.htmlに続ける格好だが、ブラジルで、現職のルセフ候補(「労働者党」、以下PT66歳)が105日の第一回目投票で得た得票率を10ポイント上積みして、挑戦者のネヴェス候補(「ブラジル社会民主党」、同PSDB53歳)を退け、連続再選が確定した。これで、南米では2014年にサントス(コロンビア)、モラレス(ボリビア)両大統領共々、連続再選に臨んだ全員が、これを果たしたことになる。

決選投票での得票率ではルセフ候補51.6%対ネヴェス候補48.4%で、第一回目より夫々10ポイント及び12ポイント上昇した。三位に付けたシルヴァ(ブラジル社会党、同PSB56歳)票は、過半数が後者に回ったようだ。前回2010年選挙でも決選投票に進んだが、やはりPSDBのセラ候補が付けられていた彼女との得票率差が12ポイントだったことを考えれば、かなり縮小した、とは言える。

一方、議会下院(定数513名)では、ルセフ氏を支える「人民の力と共に」連合で見ると4増の304議席、下院定数の59%を占める。今回27議席が改選された上院(定数81名)では15議席を得、非改選を含むと5増の53議席、定数の65%にもなる。与野党差は寧ろ拡大した。 

議会状況をもう少し掘り下げてみると、彼女のリーダーシップを占う点では、彼女のPTが下院第一党を守ったとは言え、新議席数は70、現行比18の減少だ。上院ではもともと第二党の位置にあり、これも2減の12議席。「人民の力と共に」連合の一角にあって副大統領を出す「ブラジル民主運動党」(以下PMDB)は、政治思想面では中道右派で、下院でこそPTを下回る第二党(66議席。但し13減)だが、上院では第一党(18議席、同2減)だ。同党の動き次第で、上下両院ともルセフ勢力が一気に少数与党に陥るだけに、同党への配慮が欠かせない。その意味でのルセフ政権の脆弱性は見て取れよう。ただ考えてみると、与党連合におけるPMDBの存在は、ブラジルの左傾化抑制に資するところも大きく、政権への安心感にも繋がるとも思えるが、如何だろうか。

野党側では、ネヴェス氏のPSDB1議席増だが54で、下院第三党だ。彼を最初から支える「ブラジルの変革」連合でみると128議席、25%に過ぎない。シルヴァ氏のPSBは議席数増減無しの34で下院第六党、彼女を支えてきた「ブラジルのための結集」連合ベースでは10%の53議席だ。仮にネヴェス氏が勝利していたとして、両連合でネヴェス政権を支えようとも、合わせて35%、また上院32%では、政権運営は覚束ないだろう。

ただ、PTも安閑としておられまい。ブラジルとは異なり経済成長が順調なボリビアでは、連続三選を成し遂げたモラレス大統領の「社会主義運動」(MAS)が、下院(定数130議席)の65%に相当する84議席、上院(同36議席)では69%に当る25議席を獲得した。MASは彼自身が創設した。ブラジルの次回2018年選挙では、その時点で73歳になろうとするPT創設者でカリスマ性の高いルラ前大統領の立候補が言われ始めている。 

ブラジル大統領選決選投票日の1026日、同じメルコスル原加盟国のウルグアイで総選挙が行われ、大統領選では、得票率47.2%のタバレ・バスケス前大統領(74歳。「拡大戦線」。以下FA)と、同30.5%のラカジェポウ下院議員(41歳。「国民党」。以下PN)と共に1130日の決選投票に進むこととなった。

前回の2009年選挙でもFA(ムヒカ候補。現大統領)対PN(ラカジェ候補。1990-95年在任の元大統領。今回出馬したラカジェポウ下院議員の実父)で決選投票に進んだ。後者は投票率を第一回目に比べ14ポイントも高めたが、敗退に終わった。今回はどうだろうか。同じ伝統政党の「コロラド党」(以下PC)から出馬し第三位に終わったボルダベリーエラン(54歳)候補が決選投票でのラカジェポウ支援を言明してはいる。

 

議会では、FAが定数30名の上院で1議席減の1599名の下院で現状維持の50、つまり半数以上を確保した。従って、ラカジェポウ候補が決選投票で逆転しても、少数与党となる。

逆転が無ければ、2005年にスタートしたFA政権が、2020年までの15年間、継続することになる。共産党一党独裁のキューバを除くラ米18カ国で、現在のところベネズエラの「ベネズエラ統一社会党」(PSUV)の20年間と、上述のブラジルのPT、及びコロンビアの「国民社会統合党」(la “U”)の16年間に次ぐ長さだ。1985年の民政移管後、この国ではPC一期5年、PN同、PC二期10年で、伝統政党による政権交代を繰り返して来たが、一政党の与党期間の長期化と言う点でも、新たな段階に入ることになる。

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