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2014年7月 8日 (火)

アルゼンチン債務問題(1)

本年630日までにNML Capital Ltdらへの13億㌦支払が為されぬ限り、他債権者への返済実行は認めない、とするニューヨーク地裁のグリーサ判事判決を非難するアルゼンチン共和国名の広告は、我が国の大手新聞社に出された。ご覧になった方も多かろう。ここで言う他債権者とは、20052010年のリスケに応じた人たちのことを指し、アルゼンチンから送金される返済資金を受けて、ニューヨーク・メロン銀行が代行する。20121122日の同内容の同判事判決とそっくりだが、その時にはアルゼンチン政府が控訴した裁判所が、後日アルゼンチン側のヒアリング実施が必要、との理由で、判決の実行は見送らせた。

今回は、617日に米国最高裁がアルゼンチンからの上告を棄却したため、上記銀行は他債権者への支払を実施しなかった。即デフォルトではない。一ヶ月間のグレースピリオド(猶予期間)が与えられる。 

アルゼンチンの債務問題、と言われれば、悪びれもせずモラトリアムを宣言し、債務を7割も棒引きさせた厚顔無恥、傲慢、不遜、と言う表現で非難する人がいる。66%の棒引き対象となったディスカウントボンドの印象が強すぎ、またアルゼンチン政府の対応に腹据えかねておられるのだろう。だが、ロイター電でさえ、リスク債務は元本の三分の一、と言う前提で報じている。

2005及び2010年のリスケでスワップされたボンドの、国家統計局調査院(INDEC)が示す2012年末残高は;

 66%のディスカウントボンド(返済期間28年間):

240億㌦(内、外貨建て182億)、金利8.28%、内、非居住者分131億(同、123億)

 割引無しボンド(同、33年):

173億㌦(同、155億)、同、1.33%、同、151億(同、142億)

 2017年満期のグローバルボンド:

10億㌦(同、10億)、同、8.75%同、10億(同、10億)

 30%ディスカウントボンド:

140億㌦(同、ゼロ)、同、3.11%、同、ゼロ(全てペソ建て) 

となっていた。合計すると563億㌦(内、外貨建て347億)、非居住者分292億(内、外貨建て275億)となる。

 http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2012/11/post-6a4f.htmを読み比べて頂きたいが、①は2005年リスケで119億だったから、2010年では121憶の計算になる。②と④は2005年だけだった。夫々155憶、243憶だ。上記と比較すれば夫々18憶増、103億減、となる。2010年だけに出た③については、金額は不明だった(以上、出所はWikipediaスペイン語版)。数字は、実に掴み難い。そもそも、リスケ対象額が820億㌦で、成立したのが93%、と、今も繰り返し伝えられる。つまり、リスケ合計額は760億㌦内外となる筈だ。上記の563億は、200憶も少ない。 

 アルゼンチン政府は、判事の命令によって影響を受ける債務が240億㌦、と言う。加えて、2005年と2010年のリスケに応じられなかった債務は150億㌦、とも言う。後者については、フェルナンデス大統領自身が何度か指摘しているが、この数字を7%で割り戻せば、リスケ対象の元本が上記の820憶の三倍近い数字になってしまう。明らかな間違いだろう。

 実際のアルゼンチンの対外債務の現行総額はどうなのだろうか。2013年末の推計乃至は暫定値として、The World Factbook1,159億㌦、我がJETROは出所をが、1,376億㌦を出しているが、後者の出所は上記のINDECだ。私も2012年の数字は見たが、中身がさっぱり分からない。上記①~④を分類して掲載した2013年版「外貨収支」報告書を見ると、2012年末の総額は1,054億㌦となっている。計563億㌦との差は、リスケに応じられなかった分を含む国債などが埋めている。一方で、全ての項目で、外貨建てとペソ建て、居住者向けと非居住者向けの区別がされている。ペソ建てについては全体の5割近いが、居住者向けが大半を占め、対外債務、とは言い難い。ただその内の200億㌦が、リスケ対象債務だ。

 5月末、アルゼンチンはパリクラブ債務返済について合意した。その総額は、私にはINDEC資料を見ても把握できないが、Wikipediaスペイン語版にはざっと90億㌦、と出ている。ただ、本年7月に第一回目の5億㌦支払い、第二回目は20155月でやはり5億㌦、期間5年間で2年間の延長が可能、ともあるので、納得し難い内容だ。ともあれ、これらが上記1,054億㌦に含まれているのかどうか、判然としない。(続く)

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