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2014年7月26日 (土)

習主席の4カ国訪問

プーチン・ロシア大統領によるラ米訪問の一番目の訪問国は、彼と同じくBRICSサミットに出席した習近平・中国国家主席の、ラ米最後の訪問国となった。キューバである。721日夜到着した。翌日、プーチン氏と同様、習氏もフィデル・カストロ前議長と会談の場を持った。副主席時代の2011年の来訪時以来のことだ。最終日の23日、同前議長が弟のラウル現議長らと開始した1953726日のキューバ革命勃発の地、サンティアゴデクーバのモンカダ兵営訪問を終え、同地から北京に出発、10日間にも及ぶラ米歴訪を終えた。プーチン氏のそれは5日間で、帰国するとほぼ同時に、武装した親ロシア派との内戦状態にあるウクライナ東部でマレーシア機の撃墜事件が起き、彼らへの対応を巡り国際的な批判の渦に晒されている。 
 元々、ラ米地域への影響力の浸透ぶりは、中国はロシアを遥かに凌ぐ。実はラ米十九か国中、中国と外交関係の無い(台湾とは有る)国が、
7カ国もある。コスタリカ(20076月から)以外の、パナマを含む中米5カ国とドミニカ共和国、及び南米で唯一パラグアイがそうだ。それでも工業製品のマーケット、鉄鉱石や銅、或いは石油の調達先と、強い補完関係の有るラ米に、中国は強い関心を持つ。
 
習氏は主席になってまだ一年強に過ぎないが、初年にメキシコ、コスタリカ(及びトリニダードトバゴ)を訪問している。今回で、外交関係のある12カ国中、6ヶ国に脚を運んだことになる。隣国日本を無視しながら。ラ米の何が中国を惹き付けるのか。 

 習氏の最初の訪問国はブラジルで、14日に入った。先ずは本来の目的である15日のフォルタレーザでのBRICSサミットに出席、BRICS開発銀行設立を決め、1,000億ドルもの準備基金が決まった。ブラジリアに移り、翌16日、BRICS他メンバーと共に南米諸国連合(Unasur)首脳との会合をこなし、17日、中国単独でラテンアメリカ・カリブ共同体(Celac)のクァルテート(幹事4カ国、とでも言おうか、現在はキューバ、コスタリカ、エクアドル及びアンティーグァ・バーブーダ)を含む計11名の首脳との会合を持ち、計350億ドルものファイナンス供与を約束した。 

次の訪問国はアルゼンチンで、丁度プーチン氏と逆回りの格好だ。フェルナンデス大統領は、BRICS・南米諸国連合(Unasur)サミットで、アルゼンチンのリスケ債務支払を、リスケに応じず100%の返済を要求する一部ホールドアウトの要求を認めるニューヨーク地裁の判事が差し留めたhttp://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2014/07/post-0f28.htmlことからデフォルト危機に陥っている現状を訴えていたが、Celac首脳と習主席との会合には出席せず帰国していた。そこに18日、彼が訪れた。
 
政治的意味合いが強かったプーチン氏の場合と異なり、軸足は経済協力の強化に置かれた。先ず、約70億ドルの借款供与協定が調印された。ロシアの原子力発電分野での協力、とは異なり、この大半は新たな水力発電所2箇所の建設に使われる。その他、食糧輸送に必要な鉄道改修と車両生産、及び船舶建造に向けられる。加えて、中国元とペソのスワップ枠を向こう3年間110億ドル相当とし、アルゼンチンの外貨準備水準強化や二国間貿易推進に充てるための両国中銀間協定も締結された。2001年のデフォルト以来、対外資金借り入れの道を閉ざされ、今も米国でテクニカルデフォルトに直面するアルゼンチンには、心強い協定となる。 

20日、ベネズエラに入った。この国の2013年の対中貿易額は、同国政府によれば192億ドル。習氏は南米第四位の貿易相手国と言っているが、実際はメキシコを含めラ米で第四位(但し、2012年)だ。ともあれ故チャベス前大統領が中国を戦略的パートナーと位置付け、これまで石油の輸出とオリノコ重油開発、インフラ整備でその存在感を高めてきた。現在原油輸出量は日量60万バーレルだが、オリノコ重油開発の進展を睨み、将来的には、米国向け並みの100万バーレルに引き上げようとしている。
 
マドゥーロ大統領によれば、習氏来訪の機会に技術、石油、鉱物、工業、ファイナンス、陸上輸送、インフラ、住宅、農業部門で計38もの協力協定を締結したようだが、アルゼンチンの場合と異なり、メディア情報では中身が判然としない。現在開発中のオリノコ重油の生産本格化を睨み、中国向け原油輸出量を米国並みの日量100万バーレルに引き上げたい、と言う意向が、両国に共通している。
 
なお、2008年からこれまで中国はベネズエラに500億ドルのファイナンス供与を行い、これを日量52.5万バーレルの石油代金で支払い、既に90%分は返済済み、との、ハウア外相の説明が伝わる。 

そして21日夜、キューバ入りした。日本時間の24日の朝日新聞朝刊にも一部出ていたが、ファイナンス、農業、工業、医療、バイオテクノロジー、石油、鉱業、エネルギー、環境、教育、通信技術など、29の協力協定を締結した。詳細は、伝わって来ない。メディアの関心が集まるのは、どうしてもフィデル氏の健康状態であろう。
 
キューバのこれまでの対中債務(金額は不詳)返済を、10年間繰り延べることも取り決められた。キューバと中国の貿易高は25億ドル(2012年、World FactBook)と、規模はベネズエラやアルゼンチンとは桁違いに小さいが、中国同様に、西半球で唯一の共産党独裁国家である。習氏も共通の価値観という表現を繰り返していたが、極めて重要なパートナーと言えるだろう。

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