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2014年7月16日 (水)

プーチンの4カ国訪問

ウクライナのクリミアを併合したロシアは、先進要8ヵ国(G8)の一角から離れ、主要新興5カ国、即ちBRICSへの傾倒を強めるのだろうか。何しろ国土面積で言えば世界の32%、人口で言えば45%を占める巨大な国家グループだ。世界一、二の人口大国である中国とインド、マーケットとしての存在感は、極めて大きい。世界最大の鉄鉱石産出国のブラジル、世界最大のガス生産国ロシア、共に世界的資源大国で工業も進む。2011年に加盟した南アも資源、工業化の意味でブラジル、ロシアに似る。
 
715日から、64年ぶり二度目の開催だったサッカーのワールドカップをやり遂げたばかりのブラジルで、4年ぶり二度目のサミットが開かれる。次回ワールドカップ開催国はロシアで、前回は南アだった。プーチン氏が決勝戦を見に行く、との話は随分前に聞いていたが、私は、えらく鷹揚な国柄だ、と言う捉え方をしていた。実は、第六回BRICSサミット出席のためだった。習近平中国主席、モディ・インド首相、ズマ・南ア大統領を含め、5ヵ国の全首脳が東北部海岸都市のフォルタレーザに集合し、この機会にBRICS開発銀行を発足させた。ミニIMFとも言うべき最終的には1,000億㌦に達する準備基金で、本部を上海に置く。 

 プーチン氏は、その諸会合に先立ち、キューバ、ニカラグア、アルゼンチンを訪れた。ブラジルは4カ国目だ。 

 711日のキューバ訪問は、ウクライナ軍に死亡者が出る親ロシア派の軍事行動を巡り、米国の対ロ姿勢が硬化した時に行われた。彼は第一次政権(200008年)期の200012月にも訪問し、1991年のソ連崩壊後冷え切っていた対キューバ関係の改善を図っており、今回は二度目となる。200811月には彼の後任のメドヴェージェフ前大統領も訪問し、その後ラウル・カストロ議長のロシア訪問も実現、関係は経済分野を中心に深まって来ていた。今回は、事前に旧ソ連時代の対キューバ債権の90%棒引きと、残る約35億ドルの10年払いと、石油開発などへの投資によるそのレファイナンスの用意を公表していた。ハバナでは、ラウル氏との首脳会談に加え、87歳のフィデル前議長とも再会し、1時間ほど会談した。写真付きでイタル・タス通信だったかが伝えた。 

 キューバに一泊もせず、彼はニカラグアに飛んだ。マナグア空港でオルテガ大統領夫妻らとの短い会談をこなしたが、予定に無かった行程変更だ。革命直後の1980年代、ニカラグア革命政府は、いわゆるコントラ(反革命勢力)との内戦で、旧ソ連による武器支援を受けた。キューバ経由だった、と言われる。ソ連崩壊と期をほぼ同じくして、右派のビオレタ・デ・チャモロ氏に選挙で敗れたオルテガ氏が下野したわけだが、ロシアはデ・チャモロ政権には冷淡だった。2007年のオルテガ政権復帰と共に、プーチン第一次政権期に関係改善をみている。ただ、ロシア首脳がニカラグアを訪問したことはなく、オルテガ氏には喜ばしいサプライズだった、と外電は伝える。 

 ニカラグアを夜発ち、12日朝にアルゼンチンに到着した。私に興味深かったのは、フェルナンデス大統領が約2週間ぶりに、元気な姿で公に登場したことだ。医師団から休養を強く勧められ、79日の独立記念日の行事をブードゥー副大統領に委ね、また、13日のサッカー決勝をルセフ・ブラジル大統領から招待されていたのに、自国代表チームが出るのに、この観戦を断っていた。彼女の健康状態は気掛かりだが、14日、準優勝したアルゼンチンチームの帰国歓迎の場にも姿を現し、メサらと抱擁を交わし、張りのある声で、立派な成績を残し誇りに思うと言っていた。
 話を戻す。12日、プーチン氏との首脳会談をこなし、夜、彼を国賓とする晩餐会を主宰した。これにはムヒカ・ウルグアイ大統領は出席したが、他に招かれていたマドゥーロ・ベネズエラ、モラレス・ボリビア領大統領は欠席した。私には、つい、彼女の健康問題と繋げて気になる。ともあれ、プーチン氏は英国がマルビナス領有権についてアルゼンチンと交渉すべき、との、彼女にとっては心強いメッセージを発した。彼女が3月、ウクライナ問題で、米英が住民投票を無視したことをダブルスタンダード、と言って強く批判したことに触れ、極めて明快な主権論、と評価した。
 一方で、彼女は米国の司法システムで債務返済が差し止めされている状況を説明した、と伝わる。今回双方代表団は原子力協力などの協定を締結した。彼女は、あくまで平和利用に限定したもの、と強調した。 

 彼がブエノスアイレスに一泊したかどうかはメディアの報道では分からないが、13日、リオデジャネイロでワールドカップの決勝戦を見ていた。テレビが映し出す優勝チームへの表彰の場で、ルセフ大統領の近くに居たメルケル・ドイツ首相の姿をご覧になった方も多かろう。実は彼は彼女との会談をリオで持った由だ。その後、ブラジリアに入り、14日、ルセフ氏の正式な歓迎行事に臨み、且つ二国間協議に入った、と伝わる。彼女はエネルギー、港湾、鉄道などの分野で、ロシアの投資を呼び掛け、また国防や科学技術などの協定が締結された。
 中国がラ米との接近に積極的なのは、周知のことだが、ロシアも、協力関係を強化することで、ラ米接近を本格化させようとしているようだ。ラ米十九カ国で、政党ベースを含め、半数で長期政権、という政治文化(私のホームページ中、ラ米の政権地図ラ米諸国の政党模様参照)が、プーチン氏には親近感があるのではあるまいか。 

 BRICSのサミットメンバーは、この後ブラジリアに場所を移し、南米諸国連合(Unasur)、及びラテンアメリカ・カリブ共同体(Celac)首脳との始めての会合に臨む。

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