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2014年1月29日 (水)

エルナンデス政権のスタート-ホンジュラス

127日、ホンジュラスでエルナンデス大統領の就任式が行われた。http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2013/11/post-bad8.htmlで述べたが昨年1124日に行われた総選挙の得票率は、次点のカストロ氏(セラヤ前大統領の夫人)に8ポイント差の37%で、この国では決選投票の制度が無いため、当選が確定していた。この数字は選挙不正の結果であるとして抗議活動を繰り返し、無効を訴えていたセラヤ氏も、1224日になって漸く矛先を納め、不承不承ながらエルナンデス当選を受け容れた。ただエルナンデス氏が犯罪組織と関わりあいのあるメンバーがセラヤ氏率いる「自由と再生の党(Libre)」の議員団の中にいる、などと発言したため、その抗議を兼ね、同党は就任式をボイコットした。

就任式で、新大統領は、犯罪集団に鉄槌を下す、と、昨年8月に創設された軍警察5千人に対し、直ちに出動するよう命令を下した。彼はまた、世界で人口当たりの殺人件数が最も多い(国連による)この国の最悪の治安状況は、麻薬組織の跳梁による、として、麻薬との戦いに、最終向け地米国のオバマ大統領に協力を呼び掛けた。また、生産国のコロンビア、向け地のメキシコ及び中米各国大統領に対しては、この分野での確固たる支援に謝意を述べた。 

「中米の父」モラサン(1792-1842)の生地であるホンジュラス。グァテマラ、エルサルバドル、ニカラグア及びコスタリカと共に、中米諸州連合(中米連邦)を構成していた。連邦は、面積で、分解してしまったラテンアメリカ諸国の基準からみても、小国だった。モラサンはこの統合国家の維持、発展に心血を注いだ。だがグァテマラに始まった連邦離脱の流れはホンジュラスにも波及し、1839年までに連邦が事実上の解体に追い込まれた。この一小国が、さらに小さい5ヵ国になった。

それから一世紀以上経って、平和憲法下、軍を持たないコスタリカを除く4ヵ国の内のグァテマラ、エルサルバドル及びニカラグアの3ヵ国が、1980年代の「中米危機」で長い内戦を経験した。最近のシリア情勢をテレビなどで見る度、これを想起してしまう。唯一の例外が、ホンジュラスだ。ただ、軍政を経験した(196310月~821月。ホームページ中の軍政時代をご参照)。その意味で、当時軍人による強権政治を敷いていたグァテマラとエルサルバドルは、重なる部分もある。

中米五ヵ国の中で、ホンジュラスに唯一際立っている政治風土は、一世紀以上も「国民党(PNH)」と「自由党(PLH)」による二大政党制が、軍政を経ても続いてきた、と言う事だろう。大統領候補者が選挙の都度組成(グァテマラ)、文民政権時代に入って結成された二大政党(エルサルバドル)、抜きん出た政権与党(ニカラグア)、繰り返す新党台頭(コスタリカ)、と、どこにも伝統政党が見えない。

この国の二大政党制はしかし、今は崩れた。軍政期を終えても、この国の定数128議席の議会で二桁の議席を得た政党は、2009年の前回選挙まで、二大政党以外では皆無だった。

ロボ前政権期に71もあった国民党の議席数は、エルナンデス政権期になって僅か48、過半数には遠く及ばない。さらに前代のセラヤ政権(2006-09。与党は自由党)の野党だった55にも及ばない。それでも政権を担うことになる。そのセラヤ元大統領が現在率いる新党のLibreが、いきなり37議席(一人離党した由で36、との報道もある)、議会第二党として台頭した。歴史的にPNHと政権交代を繰り返してきたPLH27議席で、第三党だ。また「反不正党(PA)」という新党が13議席を得ている。

ラテンアメリカでは国民の一人当たり所得(購買力ベース)がニカラグアに次いで低い貧困対策が、重要政策課題だろう。だが喫緊の課題が治安対策であることは明確だ。貧困ゆえのみではなく、明らかに麻薬犯罪もこれに絡んでいる。メディアによれば、エルナンデス政権は自由党との連立のようだ。世界最悪の治安に対しては、両党間の政争などしておれない。 

エルナンデス氏は196810月生まれの45歳、民政移管後32年の歴史の中で、大統領としては飛び抜けて若い。30歳で国会議員になった。41歳で、国会議長に就任した。かなりの大物だろう。4年間大統領を務め上げて未だ49歳だ。憲法上は大統領には一度しかなれない。これを変えようとしたセラヤ大統領(当時)は、20096月、クーデターで追放された。そのセラヤ氏が、彼の最大の政敵になっている。大統領再選への道を求めて、この二人が手を組むことはないのだろうか。 

この日、軍、警察から安全確保のため、6千人が動員された。そのような治安情勢に及び腰になったのかどうか、就任式に首脳が出席したのは、域外の台湾とコソボを含む6名。旧連邦首脳は、コスタリカのチンチーヤ大統領のみだ。他3ヵ国は、代理出席となった。その他のラテンアメリカ域内首脳で出席したのは、マルティネッリ(パナマ)、メディーナ(ドミニカ共和国)及び、サントス・コロンビア各大統領となっている。また、旧宗主国のスペインから、近年、王室外交を担っているフェリペ皇太子も出席しているので、治安問題はあまり関係ないかも知れない。また米州機構(OAS)からはインスルサ事務総長が出席した。

チンチーヤ、メディーナ、サントス各大統領とフェリペ皇太子及びインスルサ事務総長はこの後、翌28日から第二回ラテンアメリカ・カリブ共同体(Celac)サミットが行われるハバナに向かった。エルナンデス大統領も同様である。マルティネッリ大統領のみは、キューバ船による北朝鮮向け兵器輸送問題を抱えており、出席を断念した。

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