OAS復帰を否定するキューバ
1月28、29日にハバナでラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC)第二回サミットが開催された。一年前にサンティアゴで第一回目が行われたが(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2013/01/celac-eu-35ac.html)、その際に参集した欧州連合(EU)首脳は出席者の中に見当たらない。だが、ラテンアメリカ、カリブ全33ヵ国の内パナマとエルサルバドルを除く31ヵ国の首脳が一同に会した。パナマは北朝鮮向け武器問題を抱えており、エルサルバドルは2月2日の総選挙を控えている(やはり同日に総選挙を控えたコスタリカは、CELACの持ち回り議長をキューバから引き継がなければならず、欠席はできない)。
「国同士で武力を交えることの永遠に無い平和の地域」を「ハバナ宣言」で読み上げた今回サミットは、歴史的、と称えられた、と伝えられる。
このサミットには、国連の潘基文事務総長が出席した。非同盟諸国サミットに出席した前任者のアナン氏以来、この国を国連事務総長が訪問するのは7年半ぶりだ。全体会合での演説や、フィデル・カストロ前議長への表敬訪問など、よく動いた。一方、インスルサ米州機構(OAS)事務総長も招かれた。インスルサ氏自身は、1996年、チリ外相の立場でキューバ訪問経験はある。今回はOASのトップ、としての訪問だ。1948年の創設からこの方、OASのトップがキューバ入りすることは無かった。キューバのOAS復帰を囃す向きもあったのではなかろうか。ただ、オブザーバー資格であり、彼の動きは殆ど伝わって来ない。
コスタリカ首脳級のキューバ訪問は、フェレール元大統領(立憲大統領としての在任1953-57、1970-74)が現役を離れていた1962年以来のことだ。持ち回り議長国の引継ぎが無ければ、どうだっただろうか。
チリからは、ピニェラ現、バチェレ次期大統領の二人がやって来た。27日、ハーグの国際司法裁判所がペルーとの領海に関わる訴訟でペルーに有利となる裁定を下した。私はCELACの場とは言え、ウマラ・ペルー大統領との同席を望むか気になった。チリは、ハバナにおけるコロンビア革命軍(FARC)とコロンビア政府との和平対話立会い国を務めており、欠席は有り得ない、との思いはあった。結果として、この裁定をチリが認め、対ペルー領海問題終止符宣言を行ったことで、杞憂に終わった。ハバナでは、記者団の前で両国首脳が握手している。
昨年10月、フェルナンデス大統領が慢性硬膜下血腫の除去手術以来、暫く入院し、一旦復帰したが、12月10日以来公の場に姿を見せていなかった。1月下旬の再復帰後間もなく、アルゼンチン・ペソが大幅に下落した。その中にあって、CELAC開催の3日前にハバナ入りし、2日前にフィデル・カストロ前議長と昼食を共にした。アルゼンチンでは昨年の中間選挙で与党の議席が減少、2015年の大統領選に彼女が憲法改正をしてまでも連続三選を目指して出馬する、というシナリオは無くなった。多少、気落ちしているのだろうか。
一方のフィデル氏だが、潘基文氏の表敬を受けた他、ルセフ・ブラジル、ペーニャニエト・メキシコ領大統領とは個別に、またオルテガ・ニカラグア、モラレス・ボリビア及びコレア・エクアドル各大統領とは合同で面談の場を持った。確か、マドゥーロ・ベネズエラ大統領とも会っている。一様に、彼が元気で、記憶力が良く、よく喋る、と語る。
昨年末、南アのマンデラ元大統領葬儀に参列したラウル・カストロ議長が、同席していたオバマ米大統領と握手を交わしたこと、加えてフィデル・カストロ氏がこれを高く評価したことで、対米関係改善の兆し、と捉えた向きも多かった。その直ぐ後に、キューバ国民の米国移住に関する協定が結ばれた。もっと言えば、昨年2月来、キューバ国民の外国旅行制限が大きく緩和されている。個人による新車購入も解禁された。人権問題を理由に続いてきた欧州連合(EU)の共通外交政策が(ホームページ内のラ米の政権地図の左派政権の国々ご参照)、近々解除される方向にある。そんな中で米国は半世紀にも亘り、国際的非難も馬耳東風と、執拗にキューバ制裁を継続してきた。
米国が目の敵にするカストロ兄弟は、87歳と82歳である。キューバの自由化を目的とする制裁だが、キューバは明らかにその方向に進んでいる。CELACの33ヵ国全てが、米国によるキューバ制裁を非難している。国連総会でも、毎年、非難決議が繰り返されている。CELACサミットを、歴史的成功、と言われるほど、こなした。オバマ政権こそ在米キューバ人の里帰りや家族送金の規制を撤廃したが、継続される保証は無い。今、米国民のキューバ渡航自由化の動きが囁かれてはいるが、その実現までは、米国の今年の中間選挙の結果を見ないことには、楽観できまい。
キューバ政府はあくまでCELACの持ち回り議長国として「外交上の礼儀で」OAS事務総長をキューバに招請した、との立場は崩していない。キューバの方から、米国が強い影響力を及ぼすOASに、半世紀もの間追放され続けたことを恩讐の彼方に、復帰する、とは言えまい。次回米州サミットの際、何らからの動きを期待したい。