コレアの2017年までの任期確定
2月17日のエクアドル総選挙で、開票率71%の段階でコレア大統領(49歳)が57%を得票、第二位のラソ候補と34ポイント差を付けて再選が確定した。この国の制度では40%以上の得票で第二位に10ポイント以上の差を付ければ、総選挙の第一回目投票で当選が決まる。ラソ氏が未開票分で挽回するのは、不可能だ。
コレア大統領は2007年1月15日に就任、2008年6月の国民投票を経て公布された新憲法に則った総選挙が翌2009年4月に行われ、新憲法下での最初の大統領となった。就任式は同年8月10日の独立記念日だから、それまでの在職期間は2年8ヵ月と言うことになる。今回選挙結果で新任期就任は5月24日なので、新憲法下第一次在任3年と9ヵ月余り。4年間の任期を全うするとすれば、新憲法下第二次で初めてのことになる。
全うすれば、彼の政権は連続して10年5ヵ月間だ。エクアドル史上、一期を他に委ねて、再登場した人に、建国者のフロレス(在任1830-34、1839-45)や、ラ米史上有名な保守憲法を作り強い支配力を行使したガルシアモレノ(同1861-65、1869-75)、保守憲法に抵抗し自由主義革命を起こしたエロイアルファロ(同1895-1901、1906-11)の例はあるが、10年以上も連続で政権を担った最高指導者はいない。
このブログでご紹介した2013年ラ米選挙で、エクアドルも触れたが(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2013/01/2013-a637.html )、私の関心は、他の米州ボリーバル同盟諸国ベネズエラ、ボリビア、ニカラグア同様、与党「至高の祖国同盟(PAIS)が、国会の過半数の議席を獲得できるか否か、だったが、どうやら全137議席の3分の2を獲得したようだ。ようだ、と言うのは、議席配分方式が複雑で、現在同党が1,400万票獲得している旨は選挙管理委員会(CNE)のホームページで伺えるものの、最終集計には時間がかかるためで、正直申し上げ、ラ米ではどこでもそうだ。「市民参加」と言うCNE公認のNGOによれば、PAISは90議席で、これに続くのは大統領選で次点だった企業家のラソ氏率いる「機会創造運動(CREO)」の、僅か12議席だ。現最大野党で立候補したグティエレス元大統領が率いる「愛国社会党(PSP)」は、6議席ほどに激減させる。
エクアドルの議会選は一部小選挙区を採り入れたベネズエラやボリビアと異なり、ヨーロッパやラ米で一般的で、多様な民意を取り込み易い比例代表制一本で行われる。PAISの得票率はコレア候補のそれより若干高い位なので、頷ける結果だろう。総選挙には米州機構(OAS)と南米諸国連合(Unasur)から監視団が来ていたが、いずれも選挙は正当に行われた、と述べている。
コレア氏は、重要法案への障害を除去するのが最初の仕事だ、与党の過半数取得に感謝する、と述べた。新憲法下の第一次政権時代、全124議席中、与党PAISは59に過ぎず、好関係を築いた先住民運動のパチャクティクや民主人民運動が野党に回り、小党のロルドシスタ党や民主左派、拡大戦線の協力で何とか政権を運営して来た。ただ、「二十一世紀の社会主義」を標榜するコレア氏が、それに向けた政策が立法措置を伴う場合、実現に困難が伴ったことは、想像に難くない。
立法措置の具体像は私にはよく見えないが、コレア氏は勝利演説で今進めているプロジェクトを進められねば、エクアドルは変革のチャンスを逃すことになる、と言い募る。
これまで悩まされ続けたメディアへの規制は進めるだろう。彼は又、今回総選挙の敗者の一つは、腐敗したメディア界であり、彼らが言う言論・報道の自由は、腐敗政権に追従した時代に戻すことだ、実際には今の方がエクアドル史上、情報の透明性が最も高く、彼らが享受している言論・報道の自由の度合いは、実は最も高くなっている、と述べる。ニューヨークの国際ジャーナリズム機関と言うNGOが、報道の自由の無い10ヵ国の中に、イランや中国などと共に、ラ米ではブラジル(生命の危機が最も高い)とエクアドル(国権による迫害)をランクインさせた。自由についての思想の違いが有り、彼の論理がどこまで通るか、注視したい。
ともあれ、絶対過半数の議席は得た。チャベス・ベネズエラ、モラレス・ボリビア両政権が進めている外資企業国有化なども考えているのだろうか。
チャベス大統領はキューバでの手術から2ヵ月以上経った2月18日、つまりコレア当選が確定した日、帰国した。ベッドに横たわり娘と談笑するチャベス氏の写真が、その4日前に公開された。彼の実顔が写真にせよ現れたのは、実に2ヵ月ぶりのことだ。彼から国民に対するハバナからのメッセージは、ツイッターやテレビとの会見を通じて出されていた以前とは異なり、必ず、留守を預かるマドゥーロ副大統領を通して出されてきた。帰国しても当分陸軍病院に入院した状態で、国政運営は過去2ヵ月間同様、マドゥーロ氏に委ねるようだ。
コレア氏とPAISの大勝で、大統領任期制限の撤廃を狙った憲法改正を唱える与党要人も出て来た。また、ラ米域内左派陣営には、チャベス氏が表舞台に立てない状況だけに、コレア氏に纏め役を期待する向きもある、との報道も出ている。だが、コレア氏は2017年の任期を終えたら、引退する旨を公言する。チャベス氏に比べ、遥かに民主的な姿勢だけに、一般的には歓迎すべきところだ。長時間を要する大事業で、自ら旗を振って来た「二十一世紀の社会主義」建設には、彼ほどにカリスマ性を持った強力な後継者さえいれば良い。自身はそれを支援する。だが国内にいてこそ可能な話だろう。ところが、ベルギー人の妻の国に移住する意向、とも伝えられる。それなら大プロジェクトへの本気度は疑わしくなる。今回の議会選大勝も色褪せる。
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