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2013年1月29日 (火)

Celac-EUサミット

12526日、チリのサンティアゴでラテンアメリカ・カリブ共同体(Celac)とEUの第一回首脳会議が開催された。夫々33ヵ国及び27ヵ国なので60ヵ国の首脳、若しくはその代理者が集まった。ラテンアメリカ19ヵ国で欠席した大統領は、ハバナで療養中のチャベス・ベネズエラ、目下選挙戦のただ中にあるコレア・エクアドル、メルコスル加盟国として資格停止処分中のフランコ3大統領のみだ。

EUからはファン・ロンパウ欧州理事会議長(大統領)、バローズ委員長、メルケル・ドイツ、ラホイ・スペイン両首相の他、誰が出席しているのか、報道では見えない。最高指導者は41名が出席、とあるから、Celac加盟国が33ヵ国なので、上記3名以外は全て出席、となればEUからは11名、という勘定だ。

第一回Celac-EUサミットと呼ばれるが、201112月にCelacが発足http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2011/12/post-e24a.htmしたからであって、EUとラテンアメリカ・カリブ諸国とのサミットは19996月以来これで七回目になる。その後会場をマドリード、グァダラハラ(メキシコ)、ウイーン、リマ、そして再びマドリードで開かれたhttp://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/eu-0aa6.html。最後のマドリードに集合した最高首脳は30人、と聞くので、今回は良い方だろう。ラテンアメリカ側からは、欧州が深刻な経済低迷、ラ米が着実な経済成長と対照的な中、欧州側が活力を求めてきている、と映りかねない。だが、何といってもEUのラ米投資額が3,850億㌦にも上り、その逆など有り得ない。力の差は歴然としている。 

どのサミットでもそうだが、宣言文が採択される。草案の中に欧州企業による対ラ米巨額投資への法的保護が入ったが、これはベネズエラ、アルゼンチンなどが強硬に反対し、削除された。明らかにスペイン、フランス、英国企業のアルゼンチン、ボリビア、ベネズエラ資産の各国政府による接収を標的にしたもの、と看做された。 

それとは別に、チリ、ペルー、コロンビア、メキシコ四ヵ国の「太平洋同盟(AP)」への加盟希望をラホイ・スペイン首相が持ち出した。コスタリカも加盟申請中だ。APそのものは、20126月に正式に発足し、準備期間を経て、20133月末を以て動き出す。現在コロンビアだけが議会批准待ちの状態だ。加盟国間貿易において90%の商品が関税ゼロとなり、残る10%も確実な計画性を以て関税撤廃を行う。ピニェラ大統領は、EUとのサミット期間、ウマラ、サントス及びメキシコ各大統領と一緒にかかる中身を披歴し、APとしてEUとの自由貿易協定に進めたい、と抱負を語った。

この4ヵ国の人口は2億人を、GDP28千億㌦を超える。経済苦境のただ中にいるスペインには、年率35%とは言え着実に成長を見せるAPは魅力だろう。現在上記のスペイン、コスタリカの他にもオブザーバーとして我が日本、カナダ、豪州、ニュージーランド、パナマ、グァテマラ、ウルグアイが参加している。近くブラジルとポルトガルもオブザーバー参加予定だ。

ピニェラ大統領の抱負については、メルケル・ドイツ首相がメルコスルとか、APとか、別々に自由貿易を交渉するより、Celacと一括交渉が望ましいとコメントする。 

Celac-EUサミットが終わった。27日、Celacサミットに移った。201112月の創設サミットを第一回目とすれば、第二回目となる。ピニェラ大統領は開会式で、Celacを作り上げたチャベス氏に最大の賛辞を寄せ、一日も早い復帰を願う、と挨拶した。

このCelacサミットには、ルセフ・ブラジル大統領が参加できなくなった。日本のテレビ、新聞でも報道されたが、27日の未明にリオグランデドスル州サンタマリア市のディスコテック、Club Kiss が火災にあって、何と231人が死亡した。1,000人の収容能力のディスコに2,000人が押し掛け、現地のロックバンドが演奏開始しようとしたところ、花火が天井に移ったため、と言う。ルセフ氏は、これほど大勢の死者が出た以上、大統領が国外に居て良い筈がない、と述べ、同日、ブラジルに急行したものだ。帰国したからと言って大統領に何か出来る訳が無い。2014年選挙への連続出馬が囁かれるだけに、悲劇が起きたのに外遊中、では、拙いとの判断だろう。 

ともあれCelacサミットに移った。ここではモラレス・ボリビア大統領がチリに対して、太平洋への物資輸送主権を認めたらガスをチリに供給する用意がある、と発言し、ボリビアで物議を醸しているようだ。1879-83年の太平洋戦争(私のホームページからラ米の戦争と軍部のラ米確立期(1860-1910年代)の戦争参照)の結果内陸国になったボリビアだが、1904年の和親条約で太平洋への出口は確保する、と約束された自然の権利、つまり主権を伴った輸送の権利である、との解釈が根強い。チリ側は輸送の権利は妨げていない、と言う対応で来ているが、エネルギー輸入国たるチリにとって、ボリビアのガスは魅力だ。どう推移していくだろうか。 

サミットでは、マルビナス(フォークランド)はアルゼンチンの主権下にあることへの支持、米国の対キューバ禁輸への反対、ボリビアの伝統的コカ使用への支持、ハイチへの最大の経済支援などが首脳決議に盛り込まれた。

最も着目すべきは、2013-14年の議長として、既定路線ではあるが、ラウル・カストロ・キューバ議長が指名されたことだ。あまりサミットには参加しないラウル氏だが、今回はさっさとサンティアゴ入りした。Celacは現実的に具体性や実効性に乏しい、と言うなかれ。今まで米州機構(OAS)から疎外された(OASとして2009年にキューバの復帰は認めたが、キューバ自体が断っている)国が、米州全体で米国、カナダの2ヵ国が外れただけの、33ヵ国もの共同体の代表になる。フェルナンデス・アルゼンチン大統領は、ラテンアメリカは新たな局面に入った、として、随分喜んだそうだ。

チャベス・ベネズエラ大統領は療養中のハバナから手紙を送り、マドゥーロ副大統領に代読させた。その中で、ラウル氏が議長を務めることは、半世紀に亘りキューバを疎外し続けた米国の失敗、と位置付け、喜びを滲ませている。

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2013年1月24日 (木)

2013年ラ米選挙

2013年のラテンアメリカは、チャベス・ベネズエラ大統領の20116月からの第四回目の手術と長期入院をトップニュースとして明けた。アルゼンチンの海軍練習船が米国のヘッジファンドの訴えでガーナ司法による命令に基づき同国港湾で差し止めにあうと言う不可解な事件は、国際海洋裁判所の裁定によって12月下旬、練習船解放で解決した。Wikileaksのアサンジュ代表を在ロンドン大使館に保護してきたエクアドルでは、解決策を模索しつつ、一向に進展を見せない。かかる状況下、2013年、ラテンアメリカでは幾つかの国で選挙が行われる。 

先ず来るのが、217日のエクアドル総選挙だ。任期4年の正副大統領、137名(現在の124から増員)の国会議員を選出する。

20089月の国民投票で憲法が改正され、大統領の連続再選が一度だけ認められることになった。20094月に新憲法下初代の大統領に就いたコレア候補(選挙時50歳、以下同)が、連続再選を狙う。グティエレス元大統領(55歳。在任2003-05。弾劾により失脚)も立候補しているが、対抗馬と言えるのは、昨年初頭に「機会創造運動(CREO)」と言う政党を結成した企業家のラソ候補(57歳)のようだ。ただ、世論調査ではコレア氏が圧倒的優位にある。

もう一つ注目したいのが、現与党「至高の祖国同盟(PAIS)」の国会議席増加が成るかどうかだ。現在、議会第一党ではあっても59議席、つまり定数の半数に満たない。エクアドルが加盟する米州ボリーバル同盟(ALBA)の他の南米二ヵ国(ベネズエラ及びボリビア)では、大統領自身の政党が6割以上の議席を持つ。ここまで行けるだろうか。 

次は421日のパラグアイ総選挙だ。任期5年の正副大統領、国会議員(上院45名、下院80名)らを選出する。この国では憲法上、大統領の再登場が禁じられている。ラ米ではこのような国はメキシコなど他にも4ヵ国ある。20126月に議会によるルゴ前大統領罷免の手続が非民主主義的、とし、南米諸国連合(Unasur)とメルコスルから資格停止処分を受けた。その解除はパラグアイで民主的選挙の実施を確認した後になる、とされており、重要性は高い筈だ。

パラグアイはストロエスネル独裁時代(1944-89年)を含め、コロラド党(ANR-PC)が60年以上もの政権を担って来た。それを止めたのが、真正自由党(PLRA)と連立を組んだルゴ氏だ。彼は、罷免された後に参加した「グアス戦線(FG)」から上院議員選に臨む。夫々の陣営からの大統領候補は分かっているが、私にはその年齢、現職、前歴のいずれも分からないので割愛する。ただ、Unasur及びメルコスルの対応、取り分け資格停止の間を縫って、パラグアイ議会が反対していたベネズエラのメルコスル加盟が成ったことに反発する現議会勢力が大きく変わるとは考え難く、少なくともメルコスル復帰には、パラグアイ自身の意志で、時間がかかろう。 

10月にはアルゼンチンで、下院総議席257中確か127が改選される。また上院72議席の三分の一、24の改選となる。第二次フェルナンデス政権の2年目の終わりに行われるもので、中間選挙の意味合いを持つ。上下両院とも過半数を占める与党だが、クリスティーナ人気に陰りが見える中で、それが維持できるか、気になるところだ。有権者は、これまでの「18歳以上」から「16歳以上」に引き下げられる。 

1110日はホンジュラスの総選挙だ。大統領と128議席の国会議員を選出する。この国は今やラ米で珍しくなった二大政党制にあり現与党の国民党(PNH)と現野党第一党の自由党(PLH)がほぼ交代で政権を担って来た。これらに20096月に追放された元PLHのセラヤ前大統領が、20115月に帰国した後に結成した「自由と再生の党(Libre)」が如何に食い込めるかがポイントになる。

大統領の任期は4年だが、憲法上、一度務めたら再び立候補できない。上記パラグアイよりも厳しい。それを再選可能とするには憲法改正が必要だが、そのための国民投票が認められながら実施されない状態で、彼自身は大統領に立候補できず、彼の夫人、シオマラ・カストロ氏(54歳)を擁立している。国民党はエルナンデス国会議長(45歳)が、自由党は弁護士のビイェダ氏が昨年11月の予備選で決まった。 

1117日、チリでも総選挙が行われ、任期4年の大統領と下院議員120名、及び8年の上院議員(定数38名)18名を選出する。前回2009年選挙では、「民主諸党連合(Concentación、以下「連合」)」が民政復帰後20年間政権の座を「チリのための同盟(Alianza por Chile、以下「同盟」)に奪われた。「同盟」はその後「変革同盟(Coalición por el cambio)へと呼称変更を行っている。

政治勢力毎の予備選挙は義務ではないが、実施する場合は今回より選挙管理委員会の下に行われ、その結果は拘束力を持つ。日程も630日実施、そのための候補者登録は51日、と決まっている。二大政治勢力の大統領候補がどうなるか、暫く状況の推移を見て行きたい。それ以外では、2009年選挙で善戦したオミナミ氏が、その後創設した進歩党(PRO)から出馬する。他小党から政治勢力を結成し、その中で予備選を行いたい、との申し出を拒んでいる、と言う。

なお、国会の現議席数で見ると「同盟」は、上院(定数38名)で16、「連合」の19を下回っており、下院(同120名)の584議席上回るだけだ。ただ要するに両勢力が拮抗している状態であり、「同盟」の政権維持、「連合」の奪還、いずれの場合でも、この状況から脱却できるか否かも注目したい。

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