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2012年11月11日 (日)

オバマの再選

ラテンアメリカ(以下、ラ米)関係者の大半は、米大統領選でオバマ氏がロムニー氏を制したことに安堵したことだろう。

米大統領選は良く知られるように各州に割り当てられた選挙人の総取り合戦であり、2000年選挙では得票率が低いブッシュ氏が選挙人獲得数で上回り当選した。今回は選挙人獲得数では332名対206名と、一見圧勝したオバマ氏だが、得票率は50%、ロムニー氏との差は僅か2ポイントだった。投票者の1割に当たるヒスパニック系有権者の71%がオバマ氏に投票した、との報道もある。ヒスパニック比率の高い州における彼の得票率を見ると、伝統的に共和党の強いテキサス(ヒスパニック比率38%。以下、同)とアリゾナ(30%)を除き、どこもオバマ氏が高い。ニューメキシコ(46%)、カリフォルニア(38%)、ニューヨーク(18%)、ニュージャージー(18%)、イリノイ(17%)では二桁ポイントの得票差だ。ネヴァダ(27%)、コロラド(21%)では46ポイント差で、フロリダ(23%)では1ポイント差と、全国平均を下回った。

未だに大使抜き外交関係が続くベネズエラのチャベス大統領は、二期目の彼にはラ米への介入は無用に願う、分裂状態の米国社会の統合に力を注ぐことだ、と憎まれ口を叩くが、米国の選挙戦終盤でオバマに買って欲しい、と公言もしていた。所詮米国の選挙であり、ラ米諸国の指導者がどの候補を望む、と言えば内政干渉で普通には口にできないが、全体としてオバマ敗退を望む人は少なかった筈だ。何かの報道でラ米諸国ではオバマ氏に好意を持つ国民が多い、とあった。オバマ氏が黒人(実際には母親が白人なのでラ米流に言えばムラート)、つまりアングロ・アメリカンではないから親近感がある、ことも一つの理由かも知れないが、ニクソン、レーガン、ブッシュ父子、と、ここ数十年間で共和党から大統領になった人たちの評判そのものが悪く、その裏返しのようにも思える。

ロムニー氏は外交政策に関しては、基本的にオバマ政権のそれを踏襲する、とは言っていたが、ラ米関係者で対ラ米政策の踏襲を信じ切れる人は少なかろう。少なくともボリーバル米州同盟(ALBA)諸国への姿勢が強硬化しないとは考え難い。ラ米関係者のALBAに対する好悪は別として、対キューバ制裁が再び強化され、ベネズエラとの対立関係に拍車が掛り、ボリビアやエクアドルの対米反発の度合いが高まり、これがメルコスル諸国に伝播することは懸念しよう。

オバマ大統領が歓迎したコロンビア革命軍(FARC)と政府との和平対話にしても、ラ米随一の経済大国でもあるブラジルが積極的な支援を申し出ているにせよ、キューバとベネズエラ抜きでは進展しない。そのブラジルにしても、両国とは親しい関係にある。何よりコロンビアにとっては、半世紀近く反政府武力闘争を続けて来たゲリラの武装解除が実現する。もう一つのゲリラ、民族解放軍(ELN)との和平に繋がる可能性が見える。コロンビアのアキレス腱は麻薬とゲリラだ。前者はかつてのメデジン・カルテルの如き強力な組織が崩壊し、小規模化して来た。ゲリラの武力放棄は、ラ米第三位の人口大国コロンビア、及び米州全体の悲願でもある。それには、キューバとベネズエラの役割が不可欠だ。米国の政権交代で頓挫するのは、余りに勿体ない。

20154月、第七回米州サミットがパナマで開催される。キューバを除くラ米18ヵ国の中でALBA4ヵ国は、同サミットにキューバが招かれない場合欠席する旨を言明している。ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチンも同様だ。この時点まで任期が確定している大統領は、この7ヵ国の内、チャベス・ベネズエラ、オルテガ・ニカラグア、及びALBA外ではフェルナンデス・アルゼンチンの3名、コレア・エクアドル、モラレス・ボリビア各大統領は再選され、ブラジルではルラ前大統領が復帰していよう(私のホームページの内、ラ米の政権地図政権一覧表参照)。キューバ自体に大きな変化も有り得ようし、断定は控えたいが、オバマ大統領再選が無ければ米州サミット自体が雲散し、米州機構(OAS)の存在意義喪失の深刻な事態を招いたかも知れない。 

仮に米国で政権交代があれば、麻薬問題に関する米国のラ米諸国に対する要求は強まったのではなかろうか。麻薬戦争を強化したメキシコのカルデロン政権下、麻薬組織への武器密輸が増大し、おぞましい凶悪犯罪が頻発した。メキシコの麻薬戦争は、国家権力が麻薬組織を力で捩じ伏せ、弱体化させても、新たな組織が台頭する様を見せつけている。一方で、一部組織の強大化すら招いた。暴力は中米にも伸びた。寧ろ免罪化こそ麻薬対策に効果的、との考え方が、一部ではあるがラ米指導者にも広がってきている。米国が自らの価値観で麻薬対策を無理強いしても、反発は強まる。国際協調を外交の基本に捉えるオバマ大統領は、少なくとも米国からの武器密輸取り締まりの重要性を認識し、麻薬組織との戦い方に発想の転換を呼び掛ける声に耳を傾ける。

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