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2012年6月27日 (水)

パラグアイ議会がルゴ大統領罷免(その2)

共産党一党支配下の社会主義国、キューバを除くラテンアメリカ18ヵ国の内、13ヵ国までが、大統領選に関しては決選投票制を敷く。パラグアイは、メキシコ、ホンジュラス、パナマ、ベネズエラと共に決選投票が無いと言う点で特殊、と言える。この中で、議会が二院制、と言うのはパラグアイとメキシコだけだ。

メキシコとパラグアイでは、夫々制度的革命党(PRI)とコロラド党が連続して、夫々71年間及び61年間もの長期政権を担った歴史を持つ。これまた、ラテンアメリカはおろか、世界的に見ても極めて珍しい。ただ後者はその内の35年間もの間、連続してストロエスネル(1912-2006。在任1954-89年)個人が大統領を務めた。1920年以降、大統領を経験した同一人物は二度と大統領を務めなくなったメキシコと異なる。メキシコではディアス(1830-1915)独裁が1910年にメキシコ革命を勃発させた(私のホームページ「ラ米の革命」のメキシコ革命参照)。大統領再選禁止は、ディアス期を反面教師にしている。パラグアイではストロエスネル時代を反面教師として、彼をクーデターで追放した後、メキシコと同じように大統領の再選は無くなった。 

前回述べた3年前のホンジュラスのセラヤ追放劇との関連で、同国とパラグアイを比較してみたい。両国とも人口の九割が白人と先住民の混血、メスティソだ。国土面積こそ前者が後者の四倍近いものの、人口では大差無い。一人当たりGDPは前者が後者の二倍とは言え、ラ米全体として貧困国に位置する。そして、いずれも一世紀以上も続く二大政党による政治文化にある(前者の真正急進自由党は創設後半世紀とは言え、1887年に結成された自由党の流れを引く)。

議会は、ホンジュラスが一院制、という違いこそあれ、いずれもラテンアメリカで一般的な比例代表制だ。ホンジュラスでは与党国民党が議会定数128議席の内、過半数の71、野党自由党は45だ。この二大伝統政党だけで計117議席を占める。パラグアイは上院が定数は45名、下院が80名だ。前者は全国区、後者はブロック別に分けられる。定数合計125議席の内、与党の真正急進自由党が43、野党のコロラド党が45で、この二大伝統政党が占めるのは88議席となっている。割合はホンジュラスほど高くはないが、それにしても伝統的二大政党制が残っていること自体、二十一世紀のラテンアメリカでは稀有と言える。 

パラグアイは、ラテンアメリカ諸国では最も早い1813年に独立した。建国後の最高権力者は、57年間にもわたってフランシア(1766-1840)、アントニオ・ロペス(1790-1862)、フランシスコ・ソラノロペス(1827-70。前記アントニオの息)の僅か3人だった。彼らによる殖産振興が奏功し、軍事力を含む国力が高まり、国民の教育水準も域内で最高だった、と伝わる。ブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ三国同盟との戦争(「パラグアイ戦争」、ホームページ「ラ米の戦争と軍部」のラ米確立期(1860-1910年代)の戦争参照)も、緒戦は優勢に展開された。ただ、結果的には人口の半分が失われたと言われる破滅的な敗戦に至った。その責任者であるソラノロペスは今も国民の英雄であり、今なお続く隣国への反骨精神を物語る。ストロエスネル時代を加算すると、この4人が最高権力者だったのは、1989年までの独立後176年間の内、92年間にもなる。

ホンジュラスは、中米統合の父と敬われるモラサン(1792-1842)の生国だが、建国以来隣国、特にグァテマラの影響を受け易い状況が続いた。長く最高権力者の座にあった、として私が思い浮かべられるのは、カリアス(1876-1969)程度だ。パラグアイは飛び抜けた例外だろうが、メキシコ及びグァテマラとも比較になるまい。一生涯に一度しか大統領になれないのは、自国内に反面教師が存在する、というよりも、グァテマラに歩調を合わせた結果ではなかろうか。 

パラグアイの南米南部での地位は、経済規模では南米最小国だ。国民に人種偏見が希薄なことでも知られ、グアラニー族先住民と白人との混血、メスティソ及びその子孫が、全体人口の9割を超え、ボリビアを除くと、白人が大半を占める周辺諸国とは異なる。では遅れた国か、と言えば、識字率や平均寿命はブラジルの数値を上回り、域内先進国のウルグアイ、チリ、アルゼンチンと比べ遜色無い。ホンジュラスは南米北部に連なるチブチャ系先住民を中心としたメスティソが人口の9割を超える。割合は低いが、南の隣国ニカラグアと似る。西の隣国グァテマラとエルサルバドルには、メキシコ南部同様、マヤ系先住民を中心としたメスティソが多い。白人国で囲まれるパラグアイと異なる点だ。識字率こそグァテマラやニカラグアを上回るが、平均寿命は中米で一番低い。いずれもパラグアイとは大きな開きがある。

治安面ではどうか。国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)の世界の殺人率(人口10万人に対する殺害された人数)によれば、パラグアイは11人、チリ、ペルー、アルゼンチン、ウルグアイより高いが、ブラジルの半分だ。ホンジュラスは繰り返すが、82人、世界一高い。パラグアイと比べようもない。 

現地時間の明日、アルゼンチンのメンドーサでメルコスルの首脳会議が開始される。ただメルコスルとしては、去る624日、パラグアイを資格停止にしており、フランコ臨時大統領の出席は叶わない。引き続き、と言えようが、南米諸国連合(Unasur)特別首脳会議も開かれる。実はルゴ氏はUnasur持ち回り議長に就いたばかりだったが、退陣によりペルーのウマラ大統領に代わった。引き継ぎも兼ね、この会議にルゴ氏が出席する話もあったが、彼には代表権限が無く、出席すれば懲罰を受ける、とのパラグアイ新政府の発表で、取り止めとなった。Unasur事務局長も、ベネズエラのロドリゲス前外相に交代したばかりだ。この首脳会議で南米諸国が新政権の承認に踏み切れるのだろうか。

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