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2012年4月17日 (火)

米州サミットに思う(2)

アルゼンチンのフェルナンデス大統領が15日の会議には出席しないまま、一足先に帰国した。これを書いている段階で理由の公式発表は無いが、このブログでも2年前紹介したマルビナス問題http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/post-8a42.htmlについて、サミットでの扱いが低かったことに失望したためではなかろうか。サントス大統領は、サミット開会のスピーチでこの問題に触れなかったが、その後フェルナンデス氏から「マルビナスをお忘れか」、と問われたことを認めつつ、これで彼女が帰国したとは思わないと閉会後の記者会見で述べた。モラレス・ボリビア大統領は、サミット参加34ヵ国で、32ヵ国が賛同しても2ヵ国の反対で結局否決される重要テーマとして、キューバとマルビナスがある、と指摘していた。

この種サミットでは、参加国代表全てが署名する宣言が出される。今回は出されなかった。2005年のマルデルプラタ(アルゼンチン)での第四回サミットでも出なかったが、同年は米国が推進していた米州自由貿易圏(FTAA)構想がベネズエラやメルコスル諸国の強い抵抗を受け、破綻した時だった。今回出されなかったのは、キューバ参加とアルゼンチンのマルビナス(フォークランド)領有権問題の明記を、米加が拒否したためだ。全会一致が宣言採択の基本であり、1ヵ国でも反対が有れば成り立たない。 

キューバ参加問題については、強力なキューバ系アメリカ人社会を抱く米国で大統領選挙を控えるオバマ氏が、受け容れられる筈もない。一方のラテンアメリカ・カリブ諸国では左派系から右派系まで全ての政権が、揃ってキューバ参加を訴え、若し次回サミットでこれが実現せねばサミットそのものがなくなる、と危惧する。今回ですら、コレア・エクアドル大統領はキューバが招かれないことを理由に欠席した。オルテガ・ニカラグア大統領の欠席も、公式説明は無いにせよ、同理由であることに間違いない。チャベス・ベネズエラ大統領が放射線治療でハバナに飛んだのがサミット開会式の日であり、医師団の指示であり自分は出席の積りでいた、という説明は、真実だったとしても、国際社会で額面通り受け取るのは難しい。

今年に入ってからキューバを訪問した重要人物は、治療を受けるチャベス氏だけではない。ルセフ・ブラジル、サントス・コロンビア、サミット直前のカルデロン・メキシコ各大統領がハバナに入った。ローマ法王も訪問した。明らかに、キューバの存在感は高まっている。34ヵ国中ただ一人キューバに経済制裁を半世紀間も続けて来た米国の立場には、滑稽ささえ漂う。このままでは、参加国首脳の多くが欠席し、サミットが成り立たなくなる。キューバ参加にむけ、真剣に取り組む必要が出て来た。オバマ氏は閉会後、キューバが国民に自由と繁栄を与えるための採るべき道を考慮すれば、当サミット参加を認めることになるかも知れない、と述べた。民主主義体制の確立を条件とする今までの姿勢が、幾分和らいだ。厳しい状況を目の当たりにしたためか。ロイター電が「勝利者は欠席のキューバ」と言うタイトルを付けて伝えた所以だろう。 

それと対照的なのが、マルビナスの領有権を主張するアルゼンチンだ。イギリスが軍艦とウィリアム王子を派遣して来た。何も挑発するためではなかろうが、アルゼンチンの神経を逆撫でする行為には違いない。ラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC)はアルゼンチンの立場を支持する、としている。これを対英戦争から丁度30年の節目を迎えた年の今回サミットで、米州サミットの決議事項として、纏め置きたかった筈だ。すでにメルコスル及びALBA諸国が、マルビナス船籍の船舶寄港を禁じる措置に応じ、単なる支持ではなく行動面でアルゼンチンへの連帯を見せている。

フェルナンデス大統領はサミット開会前にオバマ大統領との二者会談を予定していた。実現したかどうか、外電では確認できないが、常識的に考えればマルビナス問題に関する支持を求めるために予定されたもの、と見て良かろう。対英交渉の仲介をクリントン国務長官に要請して2年、結果的には、アルゼンチンとイギリスの二国間問題であり立ち入れない、と言う立場に留まっている。だがオバマ氏としてはこの問題で、ヨーロッパにおける最大の同盟国のイギリスとの関係悪化を招けば、彼の大統領選挙にマイナスとなる。押しかけられては迷惑なことぐらい、彼女にも分かっていよう。ひょっとしたら、米企業による請求権問題がこじれたことから、3月より米国が停止している対アルゼンチン特恵関税の解除の談判かも知れない。

ともあれ今回サミットでは、マルビナス問題は隅に置かれたようだ。ただ、モラレス氏の言う通り、本当に34ヵ国中32ヵ国がアルゼンチンの立場を支持しているのだろうか。カナダはイギリスの総督を抱く連邦構成国の立場から、支持しない。では、他の旧英領諸国はどうなのだろうか。32ヵ国の支持があれば、サントス大統領の閉会後の記者会見でも、議論の一旦は紹介された筈だ。

一足先にサミット会場を辞去したフェルナンデス大統領は、16日、スペイン石油会社レプソルが57%出資するアルゼンチン子会社、YPFを、レプソル持ち分のみを、中央政府と州政府が買収する法案の議会提出を発表した。生産が減少し、産油国アルゼンチンが炭化水素輸入に巨額(2011年で93億㌦)を支払っており、政府が経営に乗り出す必要がある、というものだ。議会は与党勢力が過半数を握っており、法案が出ると可決されよう。これには当然ながらレプソル本社が反発、スペイン政府も動き始めた。

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