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2012年2月 6日 (月)

メキシコ大統領選の行方

 

25日、メキシコ現与党の国民行動党(PAN)大統領候補予備選が行われ、バスケス下院議員(51歳)が選出された。メキシコ三大政党から大統領選に出馬する初めての女性候補となる。1月時点での最有力候補は制度的革命党(PRI)のペーニャニエト前メキシコ州知事だった。またカリスマ性の高い民主革命党(PRD)のロペスオブラドル氏(通称AMLO)も連続出馬する(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2012/01/2012-620f.html)。彼女は、フォックス、カルデロン両PAN政権下で夫々社会開発相と公共教育相に起用されたものの、政治家としての実績は2009年中間選挙で当選した下院議員だけのようだ。

 

メキシコはアルゼンチンと共に、ラテンアメリカでは珍しい中間選挙を行う。このブログでも2009年に話題にしたhttp://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2009/07/post-8268.html

 

メキシコの場合は、下院議員の任期が大統領と上院議員の6年に比べ、その半分、3年だからだ。米国の下院議員任期が2年なので、やはり中間選挙が行われる形と、全く同じである(アルゼンチンは、下院議員任期は大統領と同じ4年だが、総選挙では半数しか選ばず、2年後に残り半数を、また任期が6年の上院議員は三分の一を2年毎に選ぶ制度を採る)。2009年中間選挙では、PRIが議席を倍増し第一党に躍り出た。一方でPANは、カルデロン政権下で麻薬犯罪による犠牲者が急増する中で国民支持を落としたのか、3割も減らした。その際にPANから当選した一人が、バスケス氏だ。

 

  1994年から2009年までの選挙で三大政党(若しくは政党連合)が得た下院議席数(全500名)について説明すると;                          

① 1994年まではPRIが過半数を占めていた(300議席)。

② 1997年の中間選挙で過半数は失ったが239議席他二党との比較では圧倒的第一党だった。

③ 2000年では208議席で、PANとその提携政党に追い越された。得票率には1.5ポイント差を付けられた。大統領選では得票率で5.5ポイント差が付き、PAN候補のフォックス氏が当選した。1929年に前身の革命的国民党(PNR)が創設されて71年間続いたPRI一党支配体制が崩れた瞬間である。

④ 2003年中間選挙ではPANが151議席の大幅減で、224議席のPRIに逆転されてしまった。フォックス政権発足後1年もしない内に、米国を同時多発テロが襲った。政権前半の対米同調政策が嫌われたのか。

⑤ 2006年総選挙では今度はPRIが僅か106議席と再びの急減。PRDにすら僅差ながら追い越され、議会第三党に落ち込んだ。PRI史上、初めてのことだった。大統領選では、カルデロン氏と僅差接戦を演じたPRDAMLOに、PRIのマドラソ候補は7ポイント差を付けられ、第三位に終わった。PRI始まって以来のことで、屈辱は大きかったことだろう。

 

 

PRI政権奪回を託されたのが、ペーニャニエト氏だ。前中間選挙の勢いが残っていれば、まして世論調査で優位、となれば、実現して当然だろう。だが、前回の大統領選挙では、その前の中間選挙の勢いが急落した。再現する恐怖はある筈だ。AMLOも雪辱を狙っている。だが、三大政党初めての女性候補の方が、もっと気になっているのではなかろうか。

 逆にPANで女性候補、と言うのが吉と出るかどうか。カルデロン政権発足後の対麻薬犯罪強硬政策の反動で、既に5万人以上の犠牲者が出た。首無し死体の放置、逆さ吊り、顔の破壊など、殺害方法のおぞましさが、メディアで報じられる。国内治安の悪化がPANへの支持急減に繋がった、とすれば、政策見直しを打ち出すべきところだろう。だがバスケス氏は予備選勝利宣言で、その政策を継続する、と、早々と述べた。それでも党勢が回復できる、とすれば、女性候補、という要因がプラスに作用する結果、と言えるだろうか。

 2010年、ラテンアメリカ域内最大、国連の安保常任理事国入りまで狙える世界的重要国ブラジルで、女性のルセフ候補が大統領選で勝利した。彼女は行政面では、ルラ前政権下で閣僚として、最後には大統領府長官(首相)として、手腕を発揮したが、政治家経験はバスケス氏よりさらに少ない。だから、政治経験の少なさによって不利、とは言えまい。仮に勝利すれば、域内二位の大国メキシコ、第三位のアルゼンチン、と、G20諸国に入るラテンアメリカの三大主要国の大統領は、全て女性となる。

 

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