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2012年1月13日 (金)

アフマディネジャドのラテンアメリカ訪問

濃縮ウラン製造に取り組み、欧米から制裁強化を受けるイラン。米国が制裁対象をイラン中銀との決済を行う第三国の銀行に広げることを受けて、同国と正常な関係を維持してきた日本までが段階的制裁に向かおうとしている現在、アフマディネジャド大統領が18日から12日まで、ラテンアメリカ歴訪を行った。彼が大統領に就任した2005年以降、イランはラテンアメリカとの関係強化に取り組んできており、唐突性は無い。ただ、彼がこれまで訪問したのは、ブラジルを除くと、米州ボリーバル同盟(ALBA)加盟5ヵ国のみだ。

ラテンアメリカ全体を見た場合、国力のみならず、メルコスル、南米諸国連合(Unasur)の旗振り役としてのブラジルの存在は、際立っている。2010年、国際社会で最も存在感が大きい最高指導者、と言われたルラ前大統領自身が、国際社会のイラン制裁は逆効果、として、同国の核開発が平和利用に限定したもの、との核武装放棄宣言を促すことでこれを認めるよう訴え、調停に奔走した。そのブラジルは、今回歴訪先に入っていない。 

最初の訪問先は、ベネズエラだ。言うまでもなくALBAの盟主である。この統合体に及ぼす影響力は卓越しているが、ラテンアメリカ全体でみれば、ブラジルには到底及ばない。この国へは、彼には5回目の訪問、となる。

チャベス大統領は国際社会で主権を最も声高に叫ぶ人であり、平和利用の核開発は、主権国家の権利、と断言しイランを擁護する。返す刀で、欧米は主権国家たるリビアに対し武力で悪魔的な内政干渉を行った、など激しい非難を浴びせた。イランには最高の理解者だろう。アフマディネジャド氏は彼を「人民の大統領Presidente Popular」、「ラテンアメリカ革命の象徴」と持ち上げ、共に傲慢で貪欲の帝国主義と戦おう、と述べた。ついでながら、ベネズエラのアコスタ駐マイアミ総領事(女性)がその2日前、10日までに国外退去、と言う命令を米政府から受けていた。理由は明らかにされていないが、彼女が在メキシコ大使館勤務中にイランの核開発に利するためと推測される行動が、201112月、テレビのドキュメンタリー番組で取り上げられていた。 

110日、チャベス大統領と共に、ニカラグアを訪問、オルテガ大統領の新任期(~2017年)就任式に出席した。20061月の彼の一期目就任式の直後に次いで2度目の訪問だ。オルテガ氏は、彼の与党が前回選挙で、議会で全92議席中63議席を獲得したことから、加盟するALBAの盟主、ベネズエラのチャベス政権にも似た圧倒的政治基盤を得た。一方で、彼の連続再選自体、最高裁の不当且つ恣意的な判断による違法なもの、との見方は一向に収まらず、新たな任期の正統性は無いとする反オルテガデモが就任式前日も起きたばかりだ。今後の政権運営がチャベス流になるのか、それとも従来通り対米配慮を含む国民融和的なものになるのか、まだ見通せる段階ではない。式に参加した外国首脳は、彼ら二人を除くと、コロム・グァテマラ、フネス・エルサルバドル、ロボ・ホンジュラス、マルティネッリ・パナマ各大統領など、ほぼ中米諸国からのみだ。だが不自然さは残る。ニカラグアとイランの関係は、198611月に発覚した「イラン・コントラゲート」という当時のレーガン政権下の米国の秘密政策位しか私の頭には無い。やはりチャベス氏の影響力の賜物だろう。

オルテガ氏は、就任演説に、核開発をイランの権利、とした上で、リビアのカダフィ大佐殺害を野蛮な殺戮、との非難を織り込んだ。 

111日にはキューバを訪れた。2006年にハバナで開催された非同盟諸国サミット出席以来のことだ。訪問日程を終えて彼自身が語ったところによれば、キューバは大変な友好国であり、人民の権利回復のため戦っている点で共通している。ラウル・カストロ議長との同日夜の公式会談に加え、2時間に亘って、彼の兄、85歳のフィデル前議長と、国際問題について細部に至る話し合いの場を持った。

このところフィデル前議長が死亡している、との説がネット上に流れ、これをキューバ当局が嘘、と打ち消して来た。これを意識してか、アフマディネジャド氏は、無事息災のフィデルと会えたことが非常に嬉しかった、とまで述べた。彼に同席したラウル氏は同発言に応じる形で、兄が頭脳的にも健康なことの例でもある、と述べた。 

112日、エクアドルを訪問した。コレア大統領の、丁度5年前の就任式に出席しているので、これが二度目となる。キューバでも述べたが、ここでも資本主義時代は衰退しており、人民時代が始まった、と繰り返した。コレア氏は「パトロン無き統合、発展を追求する人間社会、正義、平和、主権、人民の自由の名の基に」として彼を歓迎した。また、核兵器製造には乗り出さないとするイランを信頼する、国際原子力機関(IAEA)は二次情報に惑わされず、調査方法を見直し、客観的情報で判断して欲しい、と述べた。

エクアドル経済界は、米国と欧州連合(EU)との通商関係に悪影響を及ぼすとして、かかるコレア外交を無責任、と批判する。一方コレア政権は、たとえ(米国に加え)EUまでがイラン制裁に踏み切ろうと、エクアドルは国家には核エネルギー平和利用の権利がある、との立場にあり、対イラン政策の変更は無い、とする。

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