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2012年1月10日 (火)

2012年のラテンアメリカの選挙

2012年は選挙の年、とメディアが囃す。国連安保常任理事5ヵ国の内、議院内閣制の英国を除く4ヵ国の内、ロシア(3月)、フランス(4月)、米国(11月)で大統領選が行われ、10月から中国の新指導部を決める人民大会が開催されるわけで、囃すのも尤もなことだ。米国については野党の予備選動向も細かく伝えられる。日本人としては、加えて隣国の台湾(1月)の総統選、韓国(3月)の大統領選の行方も気に罹る。

この年に、共産主義一党支配のキューバを除くラテンアメリカ18ヵ国で新しく最高指導者が決まるのは3ヵ国だ。少ない方だろう。だが、GDPが購買力平価ベースで2,000億㌦以上が7ヵ国しかない中で2ヵ国、となれば、多い、とも言える。 

ラテンアメリカでG20に名を連ねるほどの国際的な主要国は3ヵ国だ。その内の一つ、メキシコで71日に総選挙が行われる。大統領(任期6年)と、上院議員(同)128名、下院議員(任期3年)500名が選出される。ラテンアメリカの議会は一般的に比例代表制を採用しているが、メキシコは下院議員の300名が小選挙区で、上院議員96名が中選挙区で選ばれる、日本に似た大選挙区比例代表並立制を採る。大統領任期と再選禁止で、G20の他2ヵ国(ブラジル、アルゼンチン)と異なるが、大統領と議員を同時に選出する総選挙方式を採っている点で共通する。中間議会選挙が行われるのは、アルゼンチンと同じだが、対象が下院議員だけであり、アルゼンチンは下院議員の半数と上院議員の3分の1と言う点で異なる。メキシコの場合、下院議員任期が大統領及び上院のそれの半分故、3年ごとの選挙は必然的、と分かり易い。

メキシコの議会勢力をみると、下院では2009年選挙の結果、総議席500に対し、制度的革命党(PRI)が239で、与党行動党(PAN)の142議席を大きく上回る。上院は前回2006年総選挙結果を反映し全128議席に対し、PRI33PAN50を下回っている。直近の民意はPRIに傾いていることが分かる。今年の選挙で上、下院とも改選されるが、その結果を注目したい。大統領候補はPRIがペーニャニエト・メキシコ州知事(45歳)で既に一本化されているのに対し、PAN25日の予備選まで未定だ。もう一つの有力政党、民主革命党(PRD)は、前回06年選挙でカルデロン現大統領と大接戦を演じたロペスオブラドル元メキシコ市長(58歳)に一本化されているが、世論調査ではペーニャニエト氏に支持率で大きく水をあけられている。因みにPRDの現有議席は下院で68、上院は24だ。 

色々な面で言動が国際的に注目されるチャベス大統領のベネズエラでは、107日に大統領選が行われる。大統領任期を6年(ラテンアメリカ十九ヵ国で最も長い)とする点でメキシコと共通するが、多選を認め、且つ連続再選も許される点で異なる。議会も一院制で、議員任期が5年、と言うのも、何より総選挙方式は採っていない点も異なる。それでもチャベス氏が初めて大統領に選出された199812月までは総選挙だったし、新憲法制定が行われた1999年までは、二院制を採っていた。ついでながら、新憲法下での最初の選挙は20007月に行われたが、実質的には総選挙だった。この選挙で、議会ではチャベス氏の第五共和制運動(MVR。現統一社会党PSUVの前身)が全165議席中91議席を確保した。2005年議会選では116議席を確保したが、既存有力政党がボイコットしたためで、2000年議会選で96議席にまで落とした。

57歳ながら既に14年間もの政権の座にあり、支持率が高いチャベス大統領に挑むのは、「民主主義統一連合(MUD)」統一候補だ。MUDとは、嘗ての「民主運動(AD)」、「COPEI」、及びその流れを汲む「新時代(NT)」や「正義第一(PJ)」などで構成される。2010年議会選(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2010/09/post-dc1b.html参照)では64議席を獲得した。212日の予備選で統一候補が決まるが、PJのカプリレ・ミランダ県知事(39歳)が最有力視されている。ロペス前チャカオ市長(39歳)も有力だが、かつての不正疑惑で公職追放処分に遭い係争中のところ、米州人権裁判所が撤回を要求するなどで、立候補自体が不透明となっている。

そもそも、欧米ではベネズエラの民主主義の度合いに疑念が強い。歯止めの無い一個人の再選と顕著なポピュリズム、チャベス氏に限れば大統領授権法の多用、などを批判、この中で選挙の公平性は保たれているのか、神経を使う。ブラジルに続く域内第二位の大国、メキシコよりも、ひょっとすれば注目度が高い選挙と言えよう。 

上記2ヵ国以外でも、311日、エルサルバドルで議会選、516日、ドミニカ共和国で大統領選が行われる。前者は、大統領任期の5年に対して議員の任期は3年であり、総選挙方式は採れない。この点はベネズエラに似る。後者は大統領も上下両院の議員も任期はいずれも4年で、1994年まで総選挙方式だったが、その時大統領選で勝利したバラゲール(1906-2002)が任期2年で退任を約束したことから、1996年以降は大統領選と議会選を2年おきに行う様になった。ともあれ、この2ヵ国ともベネズエラ同様、ラテンアメリカでは一般的な総選挙方式を採っていない点、記憶したい。 

エルサルバドル議会勢力は、全84議席に対し与党ファラブンドマルティ国民解放(FMLN)が35議席で、2009年まで20年間政権を担っていた「国民共和同盟(ARENA)」は19に過ぎない。20101月に結成された「国民団結大同盟(GANA)」に十数名が合流したためだ。これが今年の選挙でFMLN党勢にどう影響するか、注目点だろう。

ドミニカ共和国の大統領選については、残すは僅か5ヵ月なのに、外電は殆ど何も伝えて来ない。2010年に行われた議会選の結果、与党「ドミニカ解放党(PLD)」が下院で全183議席中105議席を、上院に至っては32議席中31議席を確保する大勝だった。その大統領候補であるメディナ前大統領府長官(60歳)は、12年前の20005月にも立候補し、現野党ドミニカ革命党(PRD)候補に敗退したが、それが今回の野党候補、メヒーア前大統領(2000-05)であり、言わば因縁の対決だ。メディナ候補は、圧倒的な議会勢力を背景に、副大統領候補としてフェルナンデスレイナ大統領の妻、マルガリータ・セデーニョ氏を担ぎ雪辱を期す。だが2004年、フェルナンデスレイナ氏が連続再選を狙ったメヒーア大統領に挑んだ時、議会勢力はPRDPLDを圧倒していた。

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