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2011年11月 9日 (水)

中米2ヵ国の大統領決定

116日、ニカラグアとグァテマラで大統領が選出された。ニカラグアは革命を成し遂げたサンディニスタ国民解放戦線(FSLN)ゲリラ出身のオルテガ氏の連続再選であり、グァテマラは退役将軍ペレスモリーナ氏の決選投票による選任で与野党の政権交代だ。

ニカラグアでは、憲法で禁じられている連続再選への疑義に加え、選挙管理委員会自体が与党の影響下にあること、一部有権者への登録証発行が為されなかったことなどを理由に、対立候補のガデア前中米議会議員やアレマン元大統領が、選挙結果の受け入れを拒んでいる。この選挙には欧州連合(EU)と米州機構(OAS)が監視団を送ったが、いずれも選挙管理委員会の不透明さを非難する。ただインスルサOAS総長は、民主度は明らかに高まっている、と評価している。またチャベス・ベネズエラ、カストロ・キューバ両首脳から早々と祝意が送られてきた。

グァテマラでは、前回次点の候補者による勝利、と言うことで、過去四半期の選挙結果の繰り返し、とも言える。退役将軍が大統領選を制したのは、過去四半世紀で初めてである。ここにもOAS監視団が派遣された。選挙が平穏の内に終わったことを祝福している。祝意を寄せたのはカルデロン・メキシコ大統領ら右派政権だけではなく、チャベス大統領も同様だ。 

ラテンアメリカ十九ヵ国には、ゲリラ出身の大統領はオルテガ氏を含め、またルセフ・ブラジル大統領を除いても、3人いる。退役軍人も、ペレスモリーナ氏を含め3人だ。この計6名で時の政権に武力で立ち向かったのは5人で、収監された経験を持つ。唯一の例外が、ペレスモリーナ氏だ。

1,380万人と、中米・カリブ8ヵ国で最大の人口を持つグァテマラは、人口の4割を先住民が占める、と言われる。この点については本ブログでも取り上げたことがあるhttp://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2009/05/post-8b60.html。長い内戦は犠牲者総数が20万人にも及ぶと言われる。内戦当事者は、国軍及び治安当局と反政府ゲリラだが、犠牲者には当事者以外の先住民が多かったことも知られる。199612月に成立した和平で、統一ゲリラ組織「グァテマラ国民革命連合(URNG)が政党化した。だが国民の支持は小さく、今回総選挙で国会に獲得したのは僅か3議席だ。同じように反政府ゲリラとして活動し、和平後政党化し、今や政権党になっている隣国エルサルバドルの「ファラブンドマルティ民族解放戦線(FMLN)」と異なる。

ペレスモリーナ氏は、ゲリラを制圧した格好の国軍側に所属した。士官学校卒でパナマにあった米軍南方司令部の米州学校(School of the Americas)で学んだエリート軍人だった。主として情報畑を歩み、19936月に成立したレオンカルピオ臨時政権下で内閣首班を務めた。対ゲリラ和平交渉では国軍を代表した。20001月、49歳で退役、国軍最後の任務は米州防衛会議のグァテマラ代表だ。人権侵害で悪名高い国軍だが、彼個人が先住民虐殺を含む実力行使に関与したことは無かったようだ。日常的な暴力に疲れた国民が期待するのは、身内に暴力の犠牲者を持ち暴力を嫌悪する、彼のような強いイメージを持つ指導者だったのだろう。ただ、対立候補の若いバルディソン氏も得票率46%と、彼に8ポイント差まで詰め寄った。2015年選挙で大統領になれるだろうか。 

オルテガ氏の得票率は、63%だ。一月前の世論調査での支持率は46%だった。「独立自由党(PLI)」のガデア氏は、同時点の支持率34%から、今回得票率は31%へと若干下がった。「立憲自由党(PLC)」のアレマン元大統領は14%から僅か6%へと急落した。FSLNは、国会で過半数の議席を得る。オルテガ氏とFSLNにとって、文字通りの大勝利である。政権運営が反米路線に向かっても不思議ではない。私は再選を予想していたが、ここまで来ると驚きが先に走る。

FSLNもグァテマラのURGN同様、左翼ゲリラだった。だが革命を成立させた点で実績は大きく異なる。URGNが統一ゲリラ組織として活動を始めた時、FSLNは革命政府を担う側にあり、寧ろ親米ゲリラとの内戦を余儀なくされた。この為、FSLNの最高指導者だったオルテガ氏に強力なカリスマ性が就いた。革命後10年半もの間政権を担い、その後の大統領選で3人に対し僅差敗退を繰り返し2006年選挙で返り咲いた。彼は彼が担う政権期間は20年半となることが確定した。国際社会が懸念するのも、一個人への権力集中だ。幾ら選挙不正をあげつらっても、他候補者、他政党がだらしないのは事実だろう。

ニカラグアと言えば、CIAWorld FactBookを見る限り、人種的には白人が17%を占め、コスタリカを除くと、中米では図抜けている。スペイン語教育の困難さを窺う先住民比率は、グァテマラより遥かに低い5%程度なのに、識字率は同国すら下回る68%、ラテンアメリカでは最低だ。革命当初、キューバから教師を多く招き識字運動に取り組んだ面影は見られない。一人当たりのGDPは、中米に限らず、ラテンアメリカでも図抜けて最低である。何もオルテガ氏、或いはFSLNだけの責任ではない。改革を進めようにも、国内外で厳しい問題を抱えての政権運営だった。 

グァテマラ政権は中道左派から右派に代わる。だが、貧困対策など社会政策は引き継ぐと言う。治安問題は、ウリベ前コロンビア政権のような改善に向かうのか、カルデロン・メキシコ政権下のような麻薬組織との泥仕合に陥るのか、注目したい。ニカラグア政権は、左派の度合いを高めよう。今でも深いチャベス・ベネズエラ政権との関わりは、反米姿勢を含め、さらに深まろう。ただ、コスタリカとの国境紛争を抱えながらも、中米共同体での孤立に敢えて進むとは考え難い。

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