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2011年9月14日 (水)

グァテマラ総選挙の行方

米国の同時多発テロ10周年に当たる911日、グァテマラでは総選挙が行われた。与党候補が出られず圧倒的優位にあった筈の「愛国党(PP、以下PP)」のペレスモリーナ候補は36%とふるわず、第二位で23%確保の「自由民主会派(Libertad Democrática RenovadaLider、以下Lider)」バルディソン候補との決選投票に持ち込まれた。

158議席の議会では、PPが第一党とは言え54議席(全議席数に対するシェア34.2%)、Liderに至っては僅か14議席(同8.9%)だ。議会第二党は現与党「国民希望同盟(UNE)」と「国民大連合(GANA)」の連合で、47議席(同29.7%)となっている。グァテマラ議会のホームページに出ている本日現在の会派別議員を基にした現有議席比では、PP16増、Liner13減だ。UNEGANAは現有議席と変わらない。

7月頃の世論調査では、投票先としては僅か5%だったバルディソン氏が躍進し、一方ではペレスモリーナ氏の得票率を、与党のサンドラ・トーレス立候補登録取り消し(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2011/08/post-d44e.html参照)前の水準に抑えた。与党候補に向かう票が、バルディソン氏に寄せられたため、と言う解説は誰にでもできよう。何せ、彼は元々UNEの議員だった。2009年に所属を現与党の国民希望同盟(UNE)から、Liderに移した。Liderは、私の知る限り2007年選挙では1議席も持っていないが、議会のホームページの原所属欄に1名が載っている。その後26名が他政党から入党してきた。圧倒的に多いのは、彼同様のUNEからの転入で、18人もいる。だから彼への親近感は、UNE支持者には多い筈だ。ただ彼もLiderも中道右派の位置付けで、実は右派PPからの転入組も5人いる。 

グァテマラは議員の政党間移動が凄まじく激しい国のようだ。2007年選挙で与党UNEが獲得したのは51議席だった。それが、現在31議席にまで減少している。議会第二党のGANA2004-08年政権党)37から17議席に減った。「グァテマラ共和戦線(FRG、以下同。2000-04年の政権党)」は衰退していたがそれでも146議席に落ち込んだ。一方でLiderと共にPPも増えた。5名がLiederに流れたが、14名が転入した。議員の政党間移動の激しさは、グァテマラ政治文化の特異性と見て良かろう。

PPは元々GANAから独立した政党だ。GANAの現有議会勢力は、今回選挙ではUNEとの連立を念頭に置き、サンドラ・トーレス氏を支援していた。中道右派が中道左派と連立するのは、ブラジルなどでも見られる。バルディソンに鞍替え出来ただろうか。それともかつての仲間、右派のペレスモリーナに投票しただろうか。そもそも中道左派のUNEから中道右派のLiderに大挙して移る感覚も分かり難い。次に、FRGも小党化し、進歩国民党(PAN1996-2000年政権党)は僅か1議席で、キリスト教民主党(DCG1986-91年政権党)、連帯実行運動(MAS1991-92)は最早議席を持たない。UNEGANAの今後を占ううえで、興味深い、もう一つの特異性だろう。 

特異性と言えば、大統領任期がそれまでの5年から4年に短縮された1995年選挙からは、大統領候補の第二位得票者が次回選挙で当選する、というパターンが続いている(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2011/07/post-d510.html参照)。だから、バルディソン氏とLiderの伸張に眼が行かざるを得ない。彼は2003年、総選挙で生地ペテン県選出議員、2007年全国区選出議員で、41歳と大変に若いが、成功した企業家として知られるようだ。ホテル、運輸会社、スーパーマーケット、ガソリンスタンドなどのオーナーだが、父親は郷里の薬剤師で決して大資産家とは思えない。よほど事業の才能に恵まれている人だろう。

ペテン県はメキシコの麻薬組織、セタス(Los Zetas)の活動が激しいことで知られ、これとの関わりを指摘する人もいるようだが、本人は、死刑制度復活による犯罪追放を叫ぶ。死刑制度は、ヨーロッパ先進国やラテンアメリカ、米国でも多くの州では廃れている。これを復活させよう、と言うのだから、麻薬組織との付き合いなど出来る筈も無かろう。兵と警察部隊の増員で麻薬組織と一般犯罪に立ち向かう、とするペレスモリーナ氏よりタカ派ではなかろうか。 

グァテマラは、メキシコ(但し任期は6年)、パラグアイ(同5年)、ホンジュラス同様、大統領の再選自体が禁じられている。メキシコは国民行動党(PAN)、制度的革命党(PRI)及び民主革命党(PRD)の三大政党制で、政党が強力な組織として動く。個人が選挙の都度、自らの政治勢力を結集するグァテマラとは、自ずと異なっている。ホンジュラスは、2012年からセラヤ前大統領の政治勢力が加わり、多少はグァテマラ化するものの、基本的に国民党と自由党の二大政党制だった。二大政党制、乃至は三大政党制のように政党自体に組織力があれば、最高権力者が再選禁止でも、その時々の最高権力者(大統領)が強い政治指導力で政策運営できよう。

メキシコではカルデロンPAN現政権6年間で、軍出動を行っても米国の協力を得ても、麻薬との戦いが終わるとは誰も思わない。5年弱で既に4万人近くの犠牲者が出た。だが、PAN政権としては、国民の支持さえ得れば、かかる政策継続は可能だ。グァテマラでも、麻薬組織や一般犯罪の多発で、その対策に強力な政治指導力が必要とされる。だからこそMano Duraのペレスモリーナ氏個人への期待は高い。しかし、許される期限は4年だ。政権期限の短さや連続性の面で制約はメキシコよりも遥かに大きい。

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