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2011年3月14日 (月)

キルチネル後任決定-UNASUR

311日、我が国でどんな専門家でも想定外の巨大地震が起き、津波で多くの被害を出し、あまつさえ福島の原発事故で揺れ動いた日に、キトでは南米諸国連合(UNASUR)外相会議が開催された。201011月にウルグアイ議会が085月の憲法条約を批准したことで「正式に発足」したUNASURの、最初のハイレベル会議で、これを以て「法的に発足」したことになる。その当日、故キルチネル事務総長の後任としてマリア・メヒーア元コロンビア外相(57歳)が、決まった。4月開催予定の首脳会議での承認を待つのみだ。会議の途中に、コレア大統領から日本への哀悼の言葉が発せられている。

キトには本部たる事務総局が置かれる。外相らはコレア大統領共々、その竣工式に立ち会った。なお、事務総局の名前にキルチネルの名前を冠することになっている。彼は、各国首脳らと連絡を取り合い、必要に応じ会合を持ち、懸案事項の解決を図っては来たが、活動拠点は自国のブエノスアイレスだった。メヒーア次期総長在任中に、事務局は完成するだろうか。未完成でもキトに常駐するのだろうか。それとも前任者同様、自国を活動拠点にするのだろうか。

事務総長は、実質的に欧州連合(EU)の委員長に相当し、対外的にはUNASURを代表する。サントス・コロンビア大統領は、「つい最近まで自国がUNASUR「醜いあひるの子」(除け者)だったのに、今やその代表だ」と手放しで歓迎し、ウリベ前政権と緊張関係にあったチャベス・ベネズエラ大統領も、「我が友人、サンペール元大統領(在任1998-2002)の政権下で外相を務めた人であり、歓迎する」と述べている。

UNASUR事務総長は、アンデス共同体(CAN)事務総長、及びメルコスル委員長と同様、任期2年で連続再選一回が認められるが、欧州委員長の5年、一度だけの連続再選が可、に比べ、権限度合いは低そうだ。未だ出来上がっていない事務総局ではあるが、陣容面でも、2万人以上もいる欧州委員会には、比べるべくもあるまい。コチャバンバ(ボリビア)に建設中の議会にしても、議員構成なども未だ決まっていない、発展途上段階にある。司法裁判所に至っては常設機関としての予定も無い(以上、私のホームページ内のラ米の地域統合参照)。それでも、キルチネル就任の時、1110月に予定されている大統領選への出馬を断念したのか、と、本ブログで余計な心配もしたものだ(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2010/05/unasur-6227.htmlメヒーア新総長はキルチネル任期残を務め、その後ロドリゲス現ベネズエラ・エネルギー相(前財務相、元外相)に交代することも決まった。彼は就任時75歳だが、チャベス大統領には心強い限りだろう。

ところで、その司法裁判所だが、最近チャベス大統領がUNASURには国際司法裁判所が必要だ、と言い始めている。彼は、最近のリビア情勢に関してカダフィ政権と反政府勢力との和平仲介を申し出た。前者は賛同したが、後者が拒否し、挫折した。顔を潰された格好だが、その後、欧州の一部と米国がリビア侵攻を企てている、と騒ぎ出した。また、ベネズエラ国内でも反チャベス派に軍を分断し内戦に持ち込む動きがあり、その背後に米国がある、と断言している。いずれも否定しているが、ともかく、米国の内政干渉と軍事侵攻を止めさせるには、国際司法裁判所が必要、それをUNASURが引き受けるべきだ、という。4月にはUNASUR首脳会議が予定されている。そこでもこんな主張を繰り返すのだろうか。

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