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2010年5月19日 (水)

第六回ラテンアメリカ・EUサミット

518日、リオデジャネイロで初めて開催されてから6回目に当たる「ラテンアメリカ・EUサミット」がマドリードで開催された。このサミットの目的としては、二地域間戦略的関係の構築、とある。よく言われるのは民主主義及び人権尊重の価値観の共有だ。最近では、気候変動に対する共闘、地球規模の経済危機からの脱出と国際金融の新たな仕組み作りなどが前面に出る。前以て、ラテンアメリカ・カリブ33ヵ国とEU27ヵ国の外相会議も行われているが、最高指導者が一堂に会するわけではない。特に今第六回サミットには、ギリシャの財政破綻を目の当たりにし、リーマンショック並みの危機への対処を最優先すべきと考えるのか、キャメロン(英)、ベルルスコーニ(伊)、メルケル(独)各首相ら、EU側主要国の指導者の欠席が目立つ。ラテンアメリカからもチャベス(ベネズエラ)、ムヒカ(ウルグアイ)、カストロ(キューバ)、オルテガ(ニカラグア)及びロボ(ホンジュラス)各大統領が欠席し、結局最高指導者で集まったのは30人ほどの由だ。ただロボ大統領は自らが出席すれば特に南米諸国が今回サミットをボイコットする状況だったので、遠慮させられた、と言うのが正確だろう。

前第五回サミットは2年前にリマで開かれた。この時は50人の最高指導者が揃った。特に気候変動問題への対応についてブラジルのエタノール事業を讃える一方、サミットのテーマだった貧困撲滅に関連し、食糧価格の急騰が話題になった。サミットの本来の目的であるラテンアメリカとヨーロッパの統合が、実はラテンアメリカにおける資本主義経済の発展と両地域間の自由貿易推進にあるとして、これに反対するグループがやはりリマに集まり自由貿易協定(FTA)と新自由主義への反対を決議していた。

実際にEU側が最も力を入れるのはFTAだろう。10年前のメキシコ、7年前のチリ以降、ラテンアメリカでEUとのFTAを締結した国は無い。この第六回サミットの前17日にEU-メルコスル諸国(但し原加盟4ヵ国に限定。ムヒカ・ウルグアイ大統領は欠席)サミットが開催され、2004年に凍結されていたFTA交渉再開について合意をみた。農業問題を抱えるEU側、特にフランスやイタリアに大きな障害が有る状態は6年前と同様であり、一朝一夕に事は進まない。だが、サミットを主催したスペインのサパテロ首相は、交渉再開自体を大成功、と見る。FTAを含む連携協定(Association Agreement)」の形を取るが、彼はEUとメルコスルを合わせた7億人にも上る大連合としての側面をも強調する。またこのサミットに合わせ、EUとペルー及びコロンビアとの個別連携協定を締結した。加えて、翌19日には中米諸国との個別サミットで、EUとしては地域単位では初めて、という意味で重要な連携協定を、中米諸国(中米共同体5ヵ国プラスパナマ)の大統領(オルテガ・ニカラグア大統領は欠席)が揃って調印する。

第六回サミットでは、ホンジュラス政権の正統性や、キューバの人権問題が俎上に置かれるとの噂もあった。現に、チャベス大統領はロボ大統領が全体会議に欠席はしても、19日のEU-中米サミットには出席することを理由に、今回欠席を決めた。カストロ議長はEUがキューバでのハンスト事件をやり玉に挙げ人権侵害への非難を強めていることに不快感を示し、スペインの調停にも拘わらず欠席した。結果的には、いずれの問題もテーマにはならなかったようだ。地震で大被害を蒙ったチリのピニェラ大統領とEUとの個別サミットも開かれ、EUとしてのチリ再建支援を約束した。2年後の第七回サミット開催国は、チリに決まってもいる。

サミットに先立つ16日、ドミニカ共和国で議会選挙が行われたが、フェルナンデス・レイナ大統領の与党、ドミニカ解放党(PLD)が議席の大半を得る大勝利だった。同日、国政とは直接無関係だが、ルラ・ブラジル大統領はテヘランに居て、イランのウラン濃縮をトルコで行うスキームを纏め上げた。彼は最近中東諸国を歴訪し、中東和平への仲介意欲を滲ませてきた。その内の一つが、イランの核問題だ。欧米がイラン制裁一辺倒なのを諌めてもきた。若し、イランがこのスキームに則った行動に移ったら、彼の功績は国際的に高い評価を得る。最近、ヒスパニック移民の取り締まり強化を目的とするアリゾナ州法への反発がラテンアメリカ中に広がり、19日にはカルデロン・メキシコ大統領がワシントンに飛びオバマ米大統領との直談判に臨む。麻薬組織の抗争が激化もあり、米国との実効性のある協力関係構築が待ったなしだ。エクアドル司法当局はコロンビアのサントス大統領候補を20083月の同国軍による越境攻撃を理由に収監命令を発し、両国間問題が又してもおかしくなってきている。

だからか、今第六回サミットが、FTAでの「大成功」とは裏腹に色褪せて見えるし、メディアも殆ど注目していないように思える。

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