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2010年4月11日 (日)

10月のブラジル大統領選:二人の強力候補

ブラジルは、大統領、議会選挙を一度に行う、ラテンアメリカでは一般的な総選挙方式を採る。加えて、26州の州知事とブラジリア連邦直轄区の知事も同時に選出する。議会では定数513人の下院議員(任期4年)全員、同81人の上院議員(同8年)はその3分の1乃至3分の22010年は後者)が対象だ。2010年は103日に行われる。

411日、最大野党のブラジル社会民主党(PSDB)はセラ前サンパウロ州知事(3月末退任)を正式に大統領候補に指名した。彼にとっては、8年前に続く、68歳にして二度目の挑戦だ。与党候補は労働者党(PT)のロウセフ前大統領府長官(同じく3月末退任)、62歳が決まっている。末期にあってなお80%を超えると言われる大変に高い支持率を誇るルラ政権からの与党候補だからと言って、彼の後任になれるわけではない、と言うのは、チリと同じで、世論調査ではセラがロウセフを支持率で上回ってきたが、このところ肉薄傾向にある。49日に初めてブラジルを訪問したチリのピニェラ新大統領は、ルラ大統領の他、ロウセフとセラ両候補と個別に会談した。

ブラジルでは今日のような強力な行政権限を持つ大統領が直接民選され、且つ任期を全うできたのは、ルラの前にはドゥトラ(在任1946-51年)、クビチェク(同56-61年)及びカルドーゾ(95-2003年)の3人しかいない。85年の民政移管後、死去、或いは弾劾で、二人続いて中途で辞めている。そして94年選挙でカルドーゾ候補が選出され、憲法修正で任期を4年に短縮する代わりに連続再選が可能となった。政界地図を見ると、労働者党(PT)、ブラジル民主運動党(PMDB)、PSDB、及びその友党ともいうべき民主党(DEM)が、言うなればブラジル四大政党で、2006年総選挙での得票率は合わせて54%だった。残りの46%は、20近い他の政党で分け合っている。2010年選挙でセラを出すPSDBは、民政移管後の政権与党にあったPMDBを飛び出たカルドーゾらのグループにより結成された。だが彼の政権は、PMDBと連立を組んだ。左派PTのルラ候補が政権に就くことを恐れたためだろう。

PT自体は、ルラ政権を誕生させ、再選させた20022006年両選挙で、得票率では一位だったが、それでも夫々18%15%である。2002年選挙では、他で支持を得た政党は小党ばかりで、結局彼自身の国民的人気が政権獲得に繋がった。実際の政策も決して急進的なものではなく、中間層にも安心感を広げた。そして2006年にはPMDBと、議席数第5位の進歩党(PP)、同第6位の社会党(PSBの支持まで取り付けた。PPは歴史的に軍政与党の流れを引く中道右派、PSBは中道左派との位置付けのようだ。経済も確実に成長している。国際舞台でも存在感が非常に高い政治家になってもきた。その彼が、ロウセフ長官を大統領候補に指名した。彼女は、当然、ルラ政治継続と、かつての新自由主義政策復帰への阻止を主張する。彼女は軍政時代に逮捕、収監された左派系活動家出身、という点で、チリのバチェレ前大統領を想起させる。釈放後は軍政期非合法活動無く、大学卒業後地方行政に従事、2002年からルラに抜擢され国政で閣僚を務めてきた人で、選挙で選ばれる、という経験は無い。現在議席数では議会第一党のPMDBは、8年前の選挙ではセラを支持したが、今回はPT候補と言うことで彼女の支持に回る。ルラ野党で議席数第七位の民主労働党(PDT)の支持も得た。だが、PSBはゴメス候補を出すし、PPはまだ態度を明らかにしていない。

PSDBは本来PMDBの左派グループが作った党だが、カルドーゾ時代の民営化推進ですっかり新自由主義経済政策の党、とのイメージが定着したようだ。そのセラ候補だが、学生運動指導者出身で軍政期に亡命経験を持っている。チリにピノチェト軍政前まで長く滞在した。民政移管直前の恩赦で帰国後はロウセフとは異なり、何度も選挙の洗礼を受けた。1984年より下院議員、上院議員、サンパウロ市長、州知事を歴任した。閣僚としてはカルドーゾ政権期に厚生相を経験している。8年前支持してくれたPMDBは失っても、8年前にルラ候補に起きた流れが、今度は彼に来ないとも限るまい。彼を支持する民主党は軍政与党内の批判勢力が創設したものだが、上記PP同様、中道右派の位置付けだ。もう一つ、小党の人民社会党(PPS)も彼の支持に回る。かつての共産党である。セラ候補は、正式指名の受諾演説で、ルラ政権が貿易拡大策を採らず、複雑で高コストの国内流通体制の変革に取り組まなかったことを、強く批判した。

ブラジルで最初、ラテンアメリカで6人目の女性大統領が誕生するか、チリに続いて脱左派政権が生まれるか、二人の支持率がどう変動していくか大変興味深い。

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