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2010年3月 1日 (月)

無くなったウリベ連続三選

226日、コロンビア憲法裁判所は、大統領連続三選を可能にする憲法改定のための国民投票が民主主義の原則への重大な侵害、として、実施してはならない旨の判断を下した。これでゲリラと犯罪への強硬姿勢で70%の支持率を誇るウリベ大統領の連続三選の可能性は消えたことになる。彼はこの判断を尊重する一方で、コロンビア民主主義には治安面での決然とした対応が今後も必要、と訴える。

530日の大統領選には、親ウリベ陣営から国民社会統合党(’la U’)から彼の政権で国防相を務めたサントス氏(58歳)、連立関係にある保守党で女性の二人、サニン、ラミレス両氏の立候補が取りざたされる。反ウリベ陣営では、自由党のパルド元国防相と、「民主代替の極」(PDA)のペトロ・ウレゴ上院議員(50歳)の二人が有力候補だ。この中でウリベ政治の継承者を自任するのがサントス前国防相だ。昨年5月に大統領選への立候補準備のため辞任していた。テロ活動が劇的に減少したのは、彼自身の成果でもある、とする。つまり、自分こそウリベ政権の功績を築いた、という自負だ。だが、ウリベ支持率の70%の票は大きく分散する、というのが大方の見方である。反ウリベ票の行方と共に、注目したい。民意は先ず、314日の議会選でも示される。大統領選に出馬する顔ぶれは、その日に届け出が締め切られる。

ウリベ政権下のコロンビアは、南米で最大の親米国として知られる。その米国は「プランコロンビア」という麻薬撲滅のための国際支援の中で、2000年から08年まで計60億㌦とも言われる巨額援助を行ってきた。コカ栽培地での除草薬散布活動に必要な小型機や資機材の供与、及び活動要員の派遣にも充てられるが、麻薬組織、左翼ゲリラ(とりわけFARC)、それに対する自警団の全国組織(AUC)、いずれも麻薬取引に関与しているとの前提で、多くは軍事、警察関連、とされる。小型機、ヘリコプター、武器、情報機器などの供与や訓練のための要員提供など様々だ。軍事部門は従来の顧問団だけでなく、2009年の新協定で7ヵ所の基地を使用する戦闘員も派遣する。麻薬組織の幹部の多くが逮捕され、またAUCの武装解除も進んだ。社会に麻薬問題を抱える米国にとって好ましい。反米の代表格であるチャベス・ベネズエラ大統領と渡り合えるウリベ大統領の存在自体も好ましい。だが、彼が連続三選に挑むことは、オバマ政権は歓迎しない。一個人が長期に亘って政治支配する国家形態は、民主主義に馴染まないからだ。

高支持率を抱えて退陣するのは、ウリベ大統領に限らない。本日退陣するタバレ・バスケス・ウルグアイ前大統領、間もなく退陣するバチェレ・チリ大統領も同様だ。西半球で最も輝ける指導者、と讃えられるルラ・ブラジル大統領も退陣する。

連続再選自体は米国でも一般的だが、ウルグアイもチリもそれすら禁じる。一方で、南米ではエクアドルとボリビアがこれを解禁した。中米6ヵ国はどこも禁じているが、ニカラグアでは解禁の動きが出てきている。ホンジュラスでは解禁しようとしたセラヤ前大統領がクーデターで追放された。連続再選とはそれほどに重い政治テーマだ。まして連続三選なぞ、過去はいざ知らず、今のラテンアメリカでは異様とも言える。これをやり遂げたのはチャベス・ベネズエラ大統領だけだ。ウリベ連続三選となれば、緊張関係にある隣国のチャベス大統領と同じことになる。隣国同士という意味でも異様だ。

米国は当然ながらウリベ後のコロンビアにも現在の親米路線を期待する。南米ではチリが右派のピニェラ政権に代わる、と言っても、中道左派のバチェレ諸党連合政権も親米だった。つまり差し引きゼロなのだ。左派政権下のベネズエラ、エクアドル及びボリビアの3ヵ国は、ウリベ政権下のコロンビアと対立関係を続けてきた。彼の後任政権が左傾化するか否かに拘わらず、ウリベ政権そのものが無くなることを歓迎する立場だろう。

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