第二回ラテンアメリカ・カリブ首脳会議
2月22日より第二回(統合・開発のための)ラテンアメリカ・カリブ首脳会議(Summit of Latin America and the Caribbean on Integration and Development (CALC)。以下、ラ米サミット)がメキシコのカンクンで開催されている。ラテンアメリカ諸国の首脳会議では米国、カナダを含めた米州サミット(4年ごと。2009年が第五回目)があるが、ラ米サミットはこの二ヵ国抜きで、且つ、キューバが入る。第一回目は、2008年12月末、ブラジルのルラ大統領の呼掛けで、同国バイア州コスタ・ド・サウイペで始まった。母体は、リオグループとカリブ共同体(CARICOM)であり、前者は旧スペイン・ポルトガル植民地諸国19ヵ国と、旧仏領のハイチ、及び旧英領のジャマイカ、ガイアナ、ベリーズの3ヵ国、計23ヵ国で構成される。後者は前者への重複加盟の4ヵ国を含む14ヵ国で構成されるので、ラ米サミット参加国数は、実に33ヵ国にもなる。今回のラ米サミットには、ガイアナと招かれていないホンジュラスを除くリオグループ21ヵ国、またCARICOM加盟国で重複していない5ヵ国から大統領や首相が参加する。
リオグループとは、1983年1月、当時の中米危機を対話による解決を域内で推進すべく、パナマ、メキシコ、コロンビア及びベネズエラ4ヵ国が83年1月に「コンタドーラ・グループ」を結成した。86年12月、これを支援するブラジル、アルゼンチン、ペルー及びウルグアイ4ヵ国も参加して結成されたのがリオグループである。90年には南米の残る4ヵ国が加盟、その後も増え続け、2008年のキューバの加盟により現在の姿となった。同年3月央に第20回サミットがサントドミンゴで開催され、冷却していたコロンビアとベネズエラが関係修復を図ったものの、直前にコロンビア軍がエクアドル内FARC拠点を越境襲撃したことを国境侵犯とし、コロンビアとの外交関係を断絶したエクアドルとの修復は成らなかった。それから2年近く経ち、今回のサミットで個別首脳会談の場が持たれ、正式に外交関係が復活するようだ。一方ベネズエラとコロンビアは、後者の米軍に対する基地使用権問題で危機的な関係に陥っており、両国首脳はお互いを激しく非難し合っている。
ラ米サミットとしては、本年1月12日に起きた大震災で二十数万人の犠牲者など莫大な被害を出したハイチへの支援、及びロボ政権のホンジュラスの米州機構(OAS)復帰問題、という重要なテーマが話し合われるが、サミット直前に表面化したイギリス企業、デザイア石油によるフォークランド沖石油開発問題の討議も不可避だ。
ハイチ支援については、先日の南米諸国連合(UNASUR)首脳会議に同国のメルバル大統領を招き、1億㌦の資金支援が決まった。その直前に、今期議長国エクアドルのコレア大統領が被災地を訪問したが、首脳としては陸続きのドミニカ共和国のフェルナンデス・レイナに次いで二人目だったそうだ。
ホンジュラス問題は相変わらず難問だ。関係改善に前向きな国も出ては来ている。欧州連合(EU)・中米間の「連合協定」交渉が進められているが、中米にはホンジュラスも含める前提だ。つまりEUはロボ政権承認に動きだした。中米諸国はニカラグアを除くと外交関係を復活させている。米国とカナダも同様だ。これに対して、ALBA加盟国(ベネズエラ、キューバ、ニカラグア、ボリビア、エクアドル)はロボ政権を承認せず、と言う立場を堅持する。最も発言力が大きい、と思われるブラジルは、セラヤ帰国と和解を強く求める。多くの南米諸国がクーデターに対する拒否反応は強い。OAS復帰については何らかの動きが出るとしても、すっきりしない状態は続こう
「マルビナス(フォークランド)は固有の領土であり、イギリスが一方的にこれを略奪し、返還要求を繰り返してきたのに無視し続けられている状態」、というのが歴代のアルゼンチンの立場だ。今回のラ米サミットへの徒爾、フェルナンデス大統領が立ち寄ったベネズエラで、チャベス大統領がエリザベス女王やブラウン首相を激しく糾弾した、との記事が出ていたが、ホスト国メキシコのカルデロン大統領も、ラテンアメリカ諸国はアルゼンチンのマルビナス領有権を支持する、と言明した。サミットにはジャマイカ、トリニダード・トバゴやバルバドスなどイギリス連邦諸国からも参加しており、これが精一杯だったのだろう。
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