成るか「ラテンアメリカ・カリブ共同体」
第二回ラテンアメリカ・カリブ首脳会議は、米加を除く33ヵ国から成る共同体構築を取り決めた。2011年7月のカラカスでの臨時サミットで名称や運営する組織などを決める。だが、リオグループに実効性が見えない現段階で、一気にカリブ共同体と合体して、どれほどの意味があろうか、との批評も見える。
この会議では結局、国別利害を前面に出すテーマの深化は図られなかった。ホンジュラス問題もその一つで、結局棚上げされた。アリアス・コスタリカ大統領はこのことで深い落胆の念を表明している。ただ会議後、最強硬派とも言えるチャベス・ベネズエラ大統領が、中米諸国が一致してロボ政権を承認すれば、態度の見直しも有り得ることを発言しており、来週のセラヤ前大統領がカラカスを訪問するが、その際何らかの進展も出てこよう。またコロンビアの米軍への基地使用権供与についても同様だ。ウリベ・コロンビア大統領とチャベス大統領の激しい非難応酬もあった旨報道されているが、フェルナンデス・レイナ・ドミニカ共和国大統領が仲介役となって両者間和解に当たる由だ。
共同声明には、フォークランド(マルビナス)問題についても、具体的中身には触れず、単に、アルゼンチンのマルビナス領有権を支持、という常識的な表現にとどめた。その後、アルゼンチンとして国連での協議を申し入れている。米国のキューバに対する経済制裁非難やハイチ支援も声明に入ったが、これもラテンアメリカでは意見の相違がみられないテーマである。また、グァテマラのコロム大統領に対し、先月、ローゼンベルグ事件が自作自演だったことを国際委員会が結論付けたことに対する祝意も声明に入った。一人の弁護士が、自分が死んだら、それはコロム大統領に殺害されたものだ、というビデオを残し、実際に死体で発見され、一時コロム政権が危機に見舞われた事件だ(本件はこのブログでも紹介http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2009/05/post-8b60.html)。
ともかく、このいわゆる「ラテンアメリカ・カリブ共同体」創設である。米国は反対こそしないが国際社会に対する米州全体の利益を代表する組織は、米州機構(OAS)である旨、クギを挿している。ベネズエラやボリビア、及びキューバは、米国が主導するOASにはラテンアメリカ利益の代表は務まらない、との立場だ。キューバは1962年1月にOASを除名された経験を持ち、2009年4月の米州サミットで復帰を認められたが、キューバ自身が拒絶した。OASと言えば、同年6月のホンジュラスのクーデターを非難し、除名し、セラヤ復権を訴えながら結局ミチェレッティ暫定大統領に時間稼ぎだけされ、何ら有効な手が打てなかった。米軍に対するコロンビア基地使用権問題では、一切動かなかった。フォークランド問題も同様だ。
だからと言って、もっと狭い12ヵ国で構成する南米諸国連合(UNASUR)すらコロンビア・ベネズエラ間摩擦の解決ができない。2月9日のメルヴァル大統領を招いてのハイチ支援を決める首脳会議には、議長のコレア・エクアドル大統領以外は、22、23日の大規模サミットを控えていたにせよ、ウリベ、ガルシア・ペルー、ルゴ・パラグアイの3大統領しか出席していない。足元すら固まっていないように見える。僅か5ヵ国の南米南部共同体(メルコスル)では、ベネズエラ加盟は実はパラグアイ議会が批准しておらず、未だに仮加盟の状態だ。
中米統合機構(SICA)は比較的によく纏まっており、SICA全体としてのホンジュラスのロボ政権承認は時間の問題だろう。メキシコは、ラテンアメリカ帰属意識が強い。だからUNASURがしっかりしていれば、23ヵ国で構成するリオグループは確かに結束できる。UNASURの現状から思うに、イギリス連邦を構成する国が多いカリブ島嶼国をさらに10ヵ国増やして、本当に共同体として実効性のある組織ができるのか、疑問が起きても不思議ではない。2011年7月、カラカスで臨時サミットを開催し、そこで名称や組織についての結論が出されることになる。見守って行きたい。