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2010年1月 5日 (火)

ラテンアメリカ-2010年選挙

2010年のラテンアメリカ選挙カレンダーを見ると、大統領選挙がチリ(117日。決選投票)、コスタリカ(27日)、コロンビア(530日)及びブラジル(103日)の4ヵ国で、議会選挙がコスタリカ(27日)、コロンビア(314日)、ドミニカ共和国(516日)、ベネズエラ(926日)及びブラジル(103日)の5ヵ国で行われる。ここではチリの決選投票以外について簡単に述べておきたい。

最も注目されるのは、一般的にはブラジル大統領選だろう。ラテンアメリカで最も存在感のあるルラ大統領は、出馬できない。与党候補はディルマ・ルセフ(選挙時62歳。以下同)官房長官だが、野党で中道の社会民主党(PSDB)のサンパウロ州知事、ジョゼ・セラ候補(68歳)が世論調査では現在、彼女の2倍ほどの支持率を得ている由だ。つまり、ルラ与党、労働者党(PT)が下野する可能性が囁かれる。セラ候補は2002年に出馬して僅差でルラ候補に敗れた人だが、2006年は候補を辞退しサンパウロ知事選に臨んだ。現職大統領の80%もの高支持率が与党政権の継続に繋がらないのは、チリに似ている。因みに、カルドーゾ前大統領(在任1995-2003)もPSDBより出ている。

しかし、私はベネズエラの議会選の方が気になる。大統領の6年と異なり、国会議員の任期は以前のまま5年なので、同国ではラテンアメリカ諸国では一般的な大統領選と議会選が同日に行われる総選挙方式は採らない。2005年議会選には、反チャベスの主要政党、新時代(UNT)及び民主行動(AD)‐社会キリスト教(COPEI)連合がボイコットした。そのため当時の第五共和国運動(MVR)が、定数167議席中116議席を押さえるに至り、他小政党の合流を得て2007年に旗揚げした統合社会党(PSUV)になってチャベス大統領の政権地盤は盤石となっている。一方で、2006年の大統領選でチャベス再選は成ったものの、UNTのロサレス元スリア県知事に38%をもたらした(本人は20094月、ペルー亡命中)。再びの議会選ボイコットがなければ、UNTAD-COPEI連合が大量の議席数を確保しよう。それが、チャベス政権運営に大きな影響力を及ぼしうるか、注目する次第だ。

コスタリカはラテンアメリカ諸国では一般的、といえるブラジル同様の総選挙制を採る。大統領選には、アリアス与党の国民解放党(PLD)からは女性のチンチーヤ副大統領が出馬するが、2006年選挙ではノーベル平和賞で知名度の高いアリアスを得票率で1%以下の僅差に追い詰めた市民行動(PAC)のソリス氏(56歳)らと戦うことになる。彼は元々アリアス第一次政権下で経済相を務めた人だが政治思想面で左派傾向が強く、彼とは袂を分かち2000年にPAC を創設、2002年より大統領選に出馬してきた。米国と中米・カリブの自由貿易協定(CAFTA-DR)批判で知られる。議会勢力でみると、前回選挙でPACが獲得した議席数は首位PLS25議席)を大きく下回る17議席だ。アリアス大統領がホンジュラス政変の調停には失敗したことが議会勢力を含めどう影響するか、注目したい。

コロンビアは大統領選の2ヵ月前に議会選を行う。ラテンアメリカでは珍しい制度を採る。ウリベ与党の「コロンビア第一」は国民社会統合党(la U)、伝統政党の保守党、及び急進改革(CR)の3党を軸とする。他にも多くの政党が参加する。だがこれら3党だけで2006年選挙では定数162議席の下院で72102議席の上院で53議席を得た。野党側では同じく伝統政党の自由党と、ANAPO(国民同盟)の流れを汲む「民主代替の極」(PDA)があり、ここから5月の大統領選に出馬予定のペトロ・ウレゴ上院議員(50歳)は、M-19のゲリラ出身だ。M-19ANAPOの急進派が立ち上げ、1980年にドミニカ大使館占拠、85年に最高裁襲撃などで世界の注目を浴びた。90年に武装解除した。自由党からはパルド元国防相(56歳)が出る。だが、ウリベ連続三選にこそ関心が集中する。コロンビア史上初となるが、隣国ベネズエラとの緊張関係の行方を占う意味でも当然だろう。

ドミニカ共和国の議会選は、政権央の中間に行われる。かかる中間選挙方式は、アルゼンチンもある。異なるのは改選が上(全32議席)・下(同、178名)両院の全議席、という点だろう。フェルナンデス・レイナ与党はドミニカ解放党(PLD)、野党はドミニカ革命党(PRD)を中心とするが、元々はPRDの創設者の一人ボッシュ(1909-2001)が離党してPLDを創設したので根は一つだ。PRDはバラゲル(1906-2003)が創設したキリスト教社会改革党(PRSC)と組んだ「国民大同盟」の形で与党と対峙している。PLDがやや左寄り、と性格付けされているものの、経済社会政策面での相違は見え難い。

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