ホンジュラス-ロボ政権の門出
(本項では、セラヤ氏、ミチェレッティ氏、及びロボ氏の肩書きを敢えて外しました。肩書抜きで表記する人名は、敬称を略します)
1月27日、ホンジュラスで大統領就任式が行われ、ポルフィリオ・ロボ政権がスタートした。参列した外国元首はフェルナンデス・レイナ(ドミニカ共和国)、マルティネッリ(パナマ)の両大統領と台湾の馬総統の3人だけ、域内でこの政権を承認する国はコロンビア、コスタリカ及びペルーがあるが、どこも大統領は参列していない。ロボ政権は自らの国民党のみならず11月29日の大統領選候補者も加えた統合政府樹立を言明し、2009年6月28日のクーデターに関し、議会承認を経て、セラヤ大統領を含む全当事者への恩赦も行った(なお、最高裁では違憲や国家背信などでセラヤ有罪のまま、としており、一方で彼を逮捕しコスタリカに追放した軍部関係者に対しては無罪判決を26日に下している)。セラヤは家族と共に、大統領就任式に参列後のフェルナンデス・レイナ大統領が同行する形で、ブラジル大使館からサントドミンゴに移った。
ロボ政権は、先ず国際的承認を得る、という基本的な政治課題を克服せねばならない。米国(就任式にバレンスエラ国務次官補が参列)の影響力に期待しているようだが、容易ではない。先ずセラヤ復帰を促す最後通牒をミチェレッティに無視された米州機構(OAS)は、11月29日選挙自体を認めていない。ロボも居座り続けたミチェレッティの頑なな対応が国際社会との亀裂を広げた、と、政権発足前から公然と批判していた。関係修復を狙い隣国グァテマラのコロム大統領を訪問したが成功しなかった。フェルナンデス・レイナ大統領をも訪問したが、ドミニカ共和国によるセラヤ受け入れを取り決めたことが奏功した程度の話で、国際社会のホンジュラス新政権に対する眼は冷たい。OASは近く代表団をホンジュラスに派遣する、としているが、仮に態度を軟化させても彼を大使館に保護していたブラジルや、クーデターを最も激しく非難していたチャベス大統領のベネズエラなどを説得できるか、一筋縄ではいくまい。ただ、米国の影響力が強い世銀とIMFは中断していたホンジュラス支援再開に動き出した。
中米諸国は、中米共同市場(MCCA)及び中米統合機構(SICA)で一体化している。私の理解に間違いなければ、中米統合銀行(BCIE)の本部はテグシガルパに置かれている。世銀などと足並みを揃えホンジュラス支援を再開した。加えて、米国とドミニカ共和国も参加する自由貿易協定(CAFTA-DR)がある。何時までもホンジュラスを疎外して良いわけがない。コロム・グァテマラ大統領は、既にロボと応対している。
セラヤ自身は、サントドミンゴ滞在は短期間とし、メキシコに入り、いずれ帰国する意向が強い。それまでの間、祖国の孤立状態解消のため、一肌脱ぐ積りがあるだろうか。彼の外交戦略の一つで、2008年10月に議会批准も得て加盟した米州ボリーバル同盟(ALBA)については、ミチェレッティ暫定政権が脱退を決めている。それ以前に、ALBA諸国のどこも、ベネズエラの格安石油供給を含め、加盟国扱いを止めている。セラヤは、帰国してブラジル大使館に入る9月21日以前、ニカラグアに長く滞在していた。オルテガ大統領とは親しい。何かやってくれようか。
中米諸国で関係が正常化すれば、残るはコロンビアとペルーを除く南米諸国とメキシコ及びキューバだ。チリのピニェラ次期政権は右派だ。ブラジルでは総選挙が今年10月に行われるが、中道のセラ候補が有力視される。だがいずれもクーデターに対する見方は、軍政で苦しんだ歴史を持つだけに、非常に厳しい。米国による指導力発揮を云々できる次元の国は、南米には少ない。これは現在の右派、カルデロン・メキシコ政権も実は同様である。ただホンジュラスは国として、元々域内でも貧困国なのに一層の経済的苦境にある。放ってはおれまい。