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2009年11月10日 (火)

米軍のコロンビア基地使用権問題

20091029日、コロンビアのベルムデス外相とブラウンフィールド駐コロンビア米国大使との間で、向こう十年間に亘る米軍へのコロンビア国内基地7ヵ所(空軍:中部パランケロ基地、東部アピアイ、カリブ沿岸マランボの3基地。陸軍:南部トレスエスキナス、中部トレマイダの2基地。海軍:カリブ沿岸カルタヘナ、太平洋岸バイアマラガの2基地)の使用権供与に関わる軍事協定が締結された。同大使の説明では;

l  米軍がコロンビア国内外の軍事行動の拠点とはなりえない。国内について言えばコロンビア国軍自体が域内で最も洗練されており、米軍は直接軍事作戦に参加する必要は無い。ましてや、国外に米軍を展開することなど米国法上も有り得ない。

l  コロンビア国軍の麻薬及び暴力組織との戦いを米軍が側面的に支援する目的でコロンビアの基地を使用するのは、プランコロンビアに沿ったもの。米軍とその関係者は、国内中央部にあるパランケロ基地(この改良工事に米国が本年だけで46百万㌦拠出することは米国の議会承認を取得済み。筆者注)を除く6基地には既にこれまでも駐留してきている。しかも、彼らの個別入国に際してコロンビア当局の許可が必要だ。

l  エクアドルのマンタ基地から撤退したこととは無関係で、コロンビア7基地の使用権を求める交渉は、それよりずっと前から行ってきた(なお、マンタ基地使用権はプランコロンビアの一環でエクアドル政府との交渉で確保したもの。筆者注)。

上記の大使説明が、ベネズエラ、エクアドル及びボリビアの左派政権国を特に意識したものであることは間違いあるまい。他のラテンアメリカ諸国でもこの協定への懸念は消えていない。8月に述べたが(http://okifumi.cocolog-wbs.com/blog/2009/08/098-4253.html)、この協定の交渉が表面化し、南米諸国連合(UNASUR)首脳会議が810日のキト会議にウリベ大統領が出席できず828日、改めてアルゼンチンのバリロチェ会議の場を持った、という経緯がある。その場では9月の国連総会やG20会議で南米首脳が米国のオバマ大統領と直接話し合おう、という流れに至ったものの、結末はよく分からない。ただ、南米社会に極めて大きなインパクトを及ぼしたことは事実で、だから、大使も懸念払拭に躍起になっていることは間違いない。

ベネズエラのチャベス大統領は今や、ウリベ政権下のコロンビアとの国交正常化(現在、大使召還中。貿易関係はほぼ中断状態)は有り得ぬ、とまで言っている。また国軍には対コロンビア戦争に備えるべし、と物騒な指令を出した。さらに、域外適用はされない、とのウリベ大統領の発言を、20083月のエクアドル国境侵犯(両国外交関係の断絶に繋がった)事件は、米軍情報に基づくコロンビア軍の攻撃だったことを引き合いに、嘘である、と決めつけている。ボリビアのモラレス大統領は南米に米軍が展開すること自体を問題視し、コロンビアのあらゆる層が協定廃棄のため立ち上がって欲しいと訴える。コロンビア国内でも議会審議を経ずに締結された経緯を問題視する人は多い。

ただ、この軍事協定が認めるのは米軍人800人(従来、プランコロンビアに沿って400人の軍事顧問が常駐)で、及びその契約者(同様に従来400人だったが、これを200人増員)を入れて1,400人の規模に過ぎない。日米安保条約を身近にする日本人の眼からは、規模は非常に小さい。彼らの支援によりコロンビア軍が、エクアドル同様にベネズエラにも越境展開するなど、有り得ようか。もともと一つの国で人種構成上も似通ったコロンビアとベネズエラだ。紆余曲折はあるが、ラテンアメリカ最左翼のチャベス、最右翼のウリベ両大統領は、今までも敵対的言動の後に結局握手してきた。米軍が絡めばややこしいのは事実だが、この両国が戦争に至る、とはちょっと考えにくい。

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