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2009年11月14日 (土)

米国にとってのプランコロンビアとは

米軍のコロンビア基地使用権問題は、11月に入って、ベネズエラのチャベス大統領による国民への戦争準備指令、これを受けたコロンビアの米州機構(OAS)提訴、チャベス大統領による望まぬ対コロンビア戦争を唆すかのメディア報道への批判、などと進んで来ている。だが、この問題はプランコロンビアの流れをみると唐突な感じはしない。200410月、米国議会はプランコロンビア遂行に派遣する軍事顧問数をそれまでの400名から800名に、契約民間人を400名から600名に引き上げる法案を承認していた。つまり、今回これが実現するだけの話である。

そもそもプランコロンビアは、199868日、パストラナ大統領(保守党。在任1998-2002)が自身の大統領選決選投票を前に、「コロンビアのためのマーシャルプラン」を提唱したことから生まれた。内容は、一言でいえば、社会不安による国内暴力を終結させ、麻薬コカインの原料、コカの栽培農家の転職支援を行うために必要な社会投資を、国際支援を呼び込んで大々的に実施する、というものだ。暴力と麻薬の元は、経済活動から除外された層の存在、国民間不平等の存在、及び貧困、と捉える。同年8月の大統領就任後、具体策を真っ先に相談した相手が、クリントン政権下の米国だった。これは、前任サンペール大統領の麻薬組織との癒着疑惑で棄損されていた米国との関係改善にも繋がった。当時「コロンビア革命軍(FARC)」と非武装地帯を設定し、11年ぶりの和平協議を推進していたが、これにも沿った形で進められた。

最終的に纏まったプランコロンビアの所要資金規模は総額75億㌦と見積もられた。49億㌦はコロンビア自身が拠出し、26億㌦を国際支援に求める、とした。配分は51%を行政司法及び社会開発改革向け、32%を対麻薬取引軍事・警察活動、及び16%を経済・社会活性化プロジェクト向け、とした。クリントン政権は、それまで米国がコロンビアに供与してきた年間3.3億㌦(軍需部門援助)に加え、13億㌦の資金援助を約束した。EU、カナダ、日本、他のラテンアメリカ諸国も乗り出した。FARCとの和平推進のため、22ヵ国代表が非武装地帯を訪問したりしている。

プランコロンビアの国際支援の実態については、実は私は不案内だ。だが、明確なのは、米国からの支援に関して言えば年間平均6億㌦強で推移してきたが、軍事・警察関連がそれまでの年3.3億㌦が大幅に増額され、一方コロンビアが国際支援を期待した経済・社会開発関連に向けた拠出額は、年間1億㌦程度に留まっていることだ。プランコロンビア自体、米国からの軍事支援を意図したわけではないが、米国を襲った2001年の9.11事件の余波もあり、また20022月、FARCとの和平交渉の決裂も相まって、プランコロンビアに関わる援助増加分、強化されたと言える。この点に関し、パストラナ大統領は、金額的にはプランコロンビアの17%に過ぎないことを強調、残りは米国以外の諸国、及びコロンビアが拠出する社会開発支援であり、軍事プログラムでは断じてない、とした。

政権がウリベ現大統領に引き継がれて間もない200211月、米議会は「対テロ法」の一環としてコロンビアに軍事訓練のための軍人400人、コカ栽培撲滅のための契約民間人400人までの派遣を認めた。米国がテロリスト指定していた右翼組織、「コロンビア全国自警連合(AUC)」の武装解除が進んだ。一方ではFARCとの和平努力は断絶した。契約民間人によるコカ栽培地に対する除草剤空中散布プロジェクトを除くと、FARCを標的にした支援にすら見える。コカ栽培農家、麻薬組織、自警団、左翼ゲリラいずれも麻薬取引に関わっている以上、対ゲリラ作戦をプランコロンビアから切り離して考えることはできない、との理由で、運用が修正されてきたのだろう。その目的とする経済・社会開発を妨害するのは石油パイプライン襲撃を繰り返す左翼ゲリラ、という理由づけも為された。

プランコロンビアが始まって既に10年、米国が意図したコカ栽培根絶は実現していない。なるほど、コロンビアの麻薬組織幹部の多くが逮捕され、多くが米国に引き渡されてきた。しかし、コカインは相変わらずコロンビアで精製され、メキシコ、中米・カリブ地域を経由して米国に流れ続けている。メキシコでは警察と麻薬組織、麻薬組織同士の武力抗争が結局軍動員にまで至って、なお沈静化していない。域内諸国に広がる波紋が、大きくなっている感じもする。FARCも兵力こそ半減した、とされるが、まだ強力だ。米国のプランコロンビア戦略が功を奏した、とは言えまい。派遣軍人倍増と契約民間人5割増は、プランコロンビア戦略の強化策、ということに間違いあるまいが、効果はあるのだろうか。

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