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2009年8月12日 (水)

09/8月南米サミットの隠れた主人公、ウリベ

2009810日、南米諸国連合(UNASUR)の本部所在地、キトでサミットが開かれた。これにコロンビアのウリベ大統領が欠席した。エクアドルと断交中という事情もある。もう一つの状況として、コロンビアが米国と交渉中の自国領土内7ヵ所の軍事基地の長期使用に関し、隣国ベネズエラのチャベス大統領が、自国に対する侵攻計画がある、として激しく反発、一週間前に駐ボゴタ大使を召還するなど、急激に高まってきた対ベネズエラ緊張関係が無視できない。コロンビアも、ベネズエラがスウェーデンから1988年に購入した対戦車ロケット砲がFARCに渡っている、として非難を上げている(ベネズエラ側は1995年、コロンビアのもう一つのゲリラ勢力である「民族解放軍(ELN)」が国境駐屯部隊を襲撃した際、盗難にあった、FARCに渡った経緯は預かり知らぬ、と逆襲)。もっと言えば、断交中のエクアドルのコレア大統領が米軍のマンタ基地使用期限の延長を拒み、間接的に米軍のコロンビア展開に繋がった背景もある。

ウリベ大統領が出席することでサミット自体の紛糾を回避する配慮もあった、と思われる。このサミットへの欠席を前提に、彼は両隣国を除く南米諸国を、84日から6日まで行脚、彼の言い分は、軍事行動がコロンビア領土外を不適用とし、あくまで国内の麻薬犯罪とFARC取り締まりに限定されたもの、且つ米軍及びその関係者は合わせて1,400名に過ぎず、今までもコロンビア国軍への訓練などを行う米軍人600名が駐在している、また彼らに治外法権は認めず、などと説明して回った。行脚結果は概ね下記のようになる。

l  全面支持はペルー(ガルシア大統領)のみ

l  チリ(バチェレ大統領)は、あくまでコロンビアの主権に属する問題、として容認。一週間前には、彼女はコロンビア領内における米軍展開は南米域内に不安を広げるもの、と言っていた。

l  パラグアイ(ルゴ大統領)は、隣国領土の安全保障が不可欠、と釘を刺した上で、一国の主権と自決に属する問題、と位置づけ、またウルグアイ(タバレス・バスケス大統領)はウルグアイ自身がラテンアメリカにおける外国軍進駐には歴史的に反対してきた、と述べた上で、内政不干渉が外交の基本である点は十分考慮する、として、両国とも事実上容認した(消極的容認)。

l  ブラジル(ルラ大統領)は、コロンビア領土外不適用の内政問題、という点で一定の理解を示すが、最大限の透明性と熟考を要求。彼は一週間ほど前に、米軍展開は好ましくない、少なくともUNASURに設けられた南米防衛評議会に諮るべし、との意見を述べており、今回の会談でも強調した、という(反対)。

l  アルゼンチン(フェルナンデス大統領)との首脳会談結果は公式に出でいないが、相当厳しいやりとりがあったとされる。アルゼンチン側の報道では、彼女は、域内軋轢は抑えるべきであり、米軍基地問題はそれに逆行する、と述べた、という(反対)。

l  ボリビア(モラレス大統領)は、米軍展開の目的はコロンビア領内の左翼ゲリラや麻薬組織との戦争ではなく、南米領土に対する示威行動にあり、いかなる規模であれ米軍の域内展開を拒絶する、と強調、チャベスの盟友ぶりを発揮した(積極的反対)。

ウリベ欠席のキト・サミットでは、やはりコロンビアの米軍展開が最大のテーマとなった。積極的反対の立場をとるチャベス及びモラレス両大統領による米軍のコロンビア展開反対決議は見送られたが、ルラ、フェルナンデス、ルゴ、コレアの4人は米軍展開に懸念を表明した。特にルラは、麻薬取締まりと人道支援との名目で、昨年よりカリブ域内に展開している米軍第四艦隊を、名指しで目障り、とまで表現した。一方で彼は、南8月末にウリベ出席のサミットを当人が賛同する場所で持とう、とも提案、概ねこれが今回サミットの決議となる。場所はコレア議長の提案を受ける形でブエノスアイレス、ということになった。

チャベスは、米軍のコロンビア駐留で懸念される戦争は、ベネズエラのみならず南米他国にも拡大する、との持論を述べ、これを受けたルラが、国連総会開催時期に合わせて、オバマ大統領とUNASURサミットのメンバーによる会議の場を持ち、コロンビア駐留軍に関する米国としての考え方を聞こう、と提案、漸く散会に漕ぎ着けた格好だ。

ところで、キト・サミット終了後、コレア第二次政権発足のセレモニーが行われた。また、この南米サミットにはキューバ(ラウル・カストロ国家評議会議長)も出席、上記の米国第四艦隊に注意すべき、と訴えていた。一方、メキシコのグァダラハラでNAFTAサミットが同時期に開催されていたことも付記しておく。

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