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2009年6月24日 (水)

新型インフルエンザに思う

AH1N1インフルエンザ(世界的にはまだ英語でSwine Flu、スペイン語でGripe Porcina、即ちブタ・インフルエンザで通っているようだ)の感染確認数は、世界保健機構(WHO) 622日集計で、世界で52,160人となっている。多い順に米国21,449人(他に死者87人)、メキシコ7,624人(同113人)、カナダ5,710人(同13人)と、NAFTA加盟三ヵ国で占める。全世界の三分の二だ。死者数は、集計時点での全世界231人の9割にも上る。感染確認数に対する死亡者数の割合は、メキシコ1.5%、米国0.4%、カナダ0.2%で、メキシコの突出振りが目立つ。米州以外では、イギリス(感染確認数2,506人)とオーストラリア(同2,436人)が多い。死亡者は両国のみで、夫々1名ずつだ。

中南米では、上記WHO集計ではメキシコの次が感染確認数で、チリが4,315人。世界でもカナダに次いで第四位に相当する。この一月間で急増した。次がアルゼンチンの1,010人で、世界第七位だ。死亡者数は、アルゼンチン7人、チリ4人で、NAFTA三ヵ国以外の総死亡数18人の過半数を占める。これに続くのはパナマの330人で、かなり少なくなる。パナマは死亡が報告されていないが、確認数がさらに少ないコロンビア(71人)が2人、グァテマラ(208人)・コスタリカ(149人)・ドミニカ共和国(93人)が夫々1人ずつとなっている。この4ヵ国の感染確認数は合わせても521人、死亡者1人のイギリスとオーストラリアを遥かに下回り、世界第十一位のスペイン(同522人)並みだが、死亡者数が合わせて5人にも上る。

WHOの集計は毎日的確に全世界の最新情報を伝えているわけではない。メキシコは6月23日段階で確認数8,279人、チリ5,186人、アルゼンチン1,294人である。死亡者も夫々116人、7人(その他に183人が重症)、17人へと増えた。ドミニカ共和国は、感染確認数こそまだ108人だが、死者は2人になった。

中南米諸国がH1N1インフルエンザに対して抱く恐れは、我々日本人以上かも知れない。何しろ感染確認数に対する致死率が高い。異常と見られてきたメキシコと、現在のアルゼンチンは、その割合が同じになった。コロンビアとドミニカ共和国は、それを上回る。感染者数は公表された数の何倍にも上るのではないか、との疑念が出ても不思議ではない。チリの姿が普通だとすれば、十倍であってもおかしくない。中南米は、チリだけは別格で、一般的に医療インフラが未整備だから、とか、咳が出て発熱しても医者にかかれない人が多いから、という無責任な発想をする人もいるかも知れない。悲しいことだ。

上記WHO集計で感染確認数131人だったブラジルは、未だ死亡者こそ出ていないが、334人に増えている。それでも18千万の中南米随一の大国がこの程度である。チリやアルゼンチンの方が先進国なだけに、本当にこの程度で済んでいるのか、と、悲しい疑問も起きる。一方、冬入りしつつある両国に比べ、平均気温は高いから、と言い聞かせることもできる。同国保健衛生省はアルゼンチンとチリへの旅行を控えるよう勧告した。

中南米史を紐解くと、コロンブス後の先住民人口の激減の最大の理由が、ヨーロッパ人が持ち込んだ疫病に対し、先住民に抵抗力が無かったため、というのが今日、一般的な解釈である(私のホームページ「ラ米の人種的多様性」の中の「先住民」http://www2.tbb.t-com.ne.jp/okifumi/C13_1.htm#2を参照)。その疫病とは、天然痘と麻疹、それにインフルエンザが挙げられる。現在の先住民は、それでも生き残った人たちの子孫ではある。ペルー、ボリビア、グァテマラでは死亡者が出ていない。アルゼンチンはヨーロッパ並みの白人国だ。

人種的理由などあるまい、と言い切ってしまいたいが、中南米での致死率の高さが、偶然とは言え、やはり気になる。発症元とされ、死亡者数が最も多いメキシコは、中南米では先住民人口が最大である。

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