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2009年1月27日 (火)

ボリビア新憲法への国民投票

2009年1月25日に実施されたボリビアの新憲法制定の是非を巡る国民投票の結果、これまで禁止されていた大統領連続再選が一回のみ可能となった。これは二十一世紀の社会主義を掲げるモラレス大統領の悲願でもあった。

大統領連続再選は、米国でも認められている。このこと自体騒ぐほどのことでもない、と思われようが、ラテンアメリカ(ラ米。旧スペイン・ポルトガル領のイベロアメリカ)十九ヵ国の中で、これを認めるのは、今回のボリビア、及び間接選挙のキューバ(国家評議会議長)を加えて8ヵ国だけだ(私のホームページ「ラ米の政権地図」http://www2.tbb.t-com.ne.jp/okifumi/CI3.htm参照。キューバを除くと回数は一回だけ)。残る11ヵ国は認めていない。昨年まではボリビアに加えエクアドルも認めていなかった。

国民投票の手続きをとってこれを認めさせた例として、1993年のペルー(フジモリ政権)、99年のベネズエラ(チャベス政権)、及び昨年のエクアドル(コレア政権)がある。それまでの政権が制圧に手を焼いたゲリア問題解決、及び混乱していた経済の建て直しを目的としたペルー以外は、全て左派政権が手掛けた。ペルーはフジモリ退陣後元に戻し、現在は再選禁止となっている。

1982年の民政移管からの四半世紀、現在風に言えば左派、中道、右派の既存政党が、交代で政権を担った。政権獲得のためには政治思想を超えて連立した。国民の55%が先住民で成人文盲率が今も13%CIAThe World Fact Book2008)の国の、政治の現実だった。先住民が総人口の過半数を占める国は、他には見当たらない。ペルーがそれに近い45%、と言われる。どちらも高文明を築いた旧インカ帝国を構成した。自らが先住民のモラレスがMAS(社会主義運動)を結成し、既存政治勢力に挑戦した。二度目で2005年の大統領選を制した。エネルギー資源開発の国家独占、土地改革、インフラ部門の国有化などの政策を実現するには時間を要する。これが、連続再選を可能とする新憲法制定に向わせた。また、先住民擁護をも盛り込んだ。その内の一つが、36箇所の先住民自治体に、県単位で委ねられた司法権の行使をも認める。

200712月に自治宣言を行ったサンタクルス、それに隣接するベニ、そのさらに北方に連なるパンド、及びタリハの4県は大規模天然ガス田を抱え、或いは農畜産の中心でもある。白人とメスティソが多い富裕地方として知られる。モラレス政権はベネズエラのチャベス政権と同様、非民主的な社会主義強権路線を目指している、として真っ向から対立し、エネルギー資源は県政府に管轄権があると主張する。088月に行われた正副大統領及び知事の信任投票では、双方が信任、となった。翌月、パンド県で、県知事支持派が中央政府事務所占拠とハイウェー閉鎖(結果として物流妨害による物資欠乏を惹き起こす)に対して大統領支持派が決起したが、15名の犠牲者を含む150名の死傷者を出す事件が起きた。反モラレス言動を強める4県(昨年12月に自治宣言を行った)の知事に対して支援した、として、上記流血事件後、米国駐ボリビア大使に国外退去させた(米国政府は関り合いを否定)。

新憲法が制定されても、国内の基本構造は変わっていない。キューバを除くラ米18ヵ国で知事が住民によって選出されるのはメキシコやブラジルなど8ヵ国に過ぎない。ラ米では市町村単位では首長は住民の直接投票によって選ばれるが、州、県単位ではその最高行政官(知事)は、大統領の任命、ないしは知事職を設けない制度の仕組みが長く続いた。それを近年になって知事公選制を導入したのが8ヵ国ある、ということで、ボリビアでは200512月に始まった。モラレスが大統領に就任する直前のことだ。

憲法公布後も、モラレスと地方との抗争は続くだろうし、暴力事件を惹き起こす可能性を論じる人もいる。暫くボリビアから眼が離せない。

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